June 24, 2012  
     ちょこっと講座
#053  タンゴのホールドについて
 
 


質問: お世話になっております。「ダンス・テクニック」を、繰り返し読んでいます。読むたびに新たな発見だあります。また分かったつもりが実はわかっていなかった、という発見もあります。

123ページに「男性の右ヒップは女性の恥骨部とコンタクト」と書いてあります。さてこの部分ですが、解剖学の本を見ると恥骨にも左右がある。どちらでしょうか? また、女性の恥骨部の位置は、かなり下部です。他方男性のヒップは、恥骨に対し、かなり上部です。コンタクト可能でしょうか? 教えてください。よろしく。(KKさん 男性)


回答: 「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」を読んで下さってありがとうございます。読むたびに発見があるというコメントは、実にその通りだと思います。

さてご質問の件ですが、私は翻訳者であって著者ではありませんので、著者に代わってお答えできる立場にいなませんが、私の読み方と個人の考えを書いて行きたいと思います。

まず、タンゴのホールドに関する説明はP114の 「メイド・イン・アルゼンチン」 から始まりますが、この章の中に「恥骨」に関する表現は3か所出ていますので、原文を交えて見て行きましょう。

<1> P.116 この形になるとき、ビルは一般の人たちとは違うやり方をしていました。彼は、まず左足に立ち、その形のまま女性に自分の左手を取らせました。次に、お互いのボディが寄ったところで、自分の右ヒップを女性の恥骨に向けてコンタクトし、それから右足をボディの下に置いたのでした。

Bill reached this position with a different method. To take the hold he stood on his left foot and asked the lady to take a hold. Now he connected the bodies and placed his right foot under his own body after he made contact with his right hip to the lady's pubic bone.


<2> P.121 男性は自分のベーシック・ポジションをわずかに左に回転させます。そうすると、両太腿と両足を同じように左回転して行きます。その結果、男性の右腰は必然的にそれまでよりも、女性の恥骨に近づきます。

The man turns in his basic position slightly to the left. The thighs and feet follow this turn to the left accordingly. Automatically his right hip gets slightly closer to the lady's pubic bone


<3> P.123 この回転では、骨盤よりも胴体の方がわずかに多く回転するため、前述したのと同じ効果を得ることができるのです。つまり、男性の右ヒップは女性の恥骨部とコンタクトしていますから、そこを通じて、女性がプロムナード・ポジションにヘッドを返す情報が伝わっていくのです。

In this rotation the torso turns a fraction more than the pelvis, therefore achieving the same effect as described before; there will be contact from the man's right hip to the lady's pubic bone. Thus the information to turn the head to Promenade Position is given.


さて、原書から引用した上の3つ英文の中では、赤字で示した恥骨(pubic bone)は単数になっていますので、まず言えることは、オリバーは(そしてビル&ボビーも)単数として捉えていたことが分かります。

また、恥骨を辞書(日英、英日、英英)で引いても単数扱いで出ていますので、これからしても、「左の恥骨か、右の恥骨か」と複雑に考えなくて良い思います。


次に、日本語文中、青字で示した「ヒップ」と「」について説明します。
ヒップの解釈は、日本語では「腰、腰回り」として捉えられていますが、英米人は、それだけでなく、「腰から腿の上半分」までも含めて考えていますので、そういう意味を込めて日本語訳ではヒップの言葉を使いました。ですから、本を読むときには、「腿の上半分」を含む領域で理解してください。2番目の例では、意図的に「腰」の方が適訳と思って使用しましたが、ここを「ヒップ」としても問題ないかと思います。

上記「ヒップ」の解釈の仕方を理解していただいた上でのコンタクト・ポイントについてですが、既にお考えのように、女性の恥骨部と男性の右ヒップとの位置関係は、男女の背の高さや脚部の長さでコンタクト・ポイントは微妙に変わります。これは間違いありません。

ここから先は完全に私の私見としてお読みください。

【1】 まず、オリバーの説明は、「真っすぐな正しいバランスにあり、その形で動けること」を前提としていると思いますので、まずは、そのバランスを探すことが最優先されなくてはなりません。

【2】 サークルや団体レッスンを受けている人たちは、しばしば、「下半身から肋骨の下までをしっかりコンタクトして」と言われ、ついでに「左を向いて」と教わったりすることもあるようですが、もし、その延長線上で男性が、「自分の右ヒップを女性の恥骨にコンタクトしなければ」と考えると、大きな間違いと犯すことになると思います ― 踊り方としても、マナーとしても。

【3】 次にホールドになりますが、男女のコンタクトはお互いが真っすぐな正しいバランスにいることができれば、そのまま近づくだけで適切なコンタクトになりますから、その上で少しだけ足首を緩めると、タンゴに適した高さになると思います。
 この辺に関しては、ご質問者が競技会に出ている場合や個人レッスンを受けておられる場合は、ご自身が教わっているプロの先生に尋ねると、適切なアドバイスが受けられると思いますので、それをお勧めします。
 もし、サークルで楽しんでおられる場合でしたら、まずは、軽いコンタクトで十分ですので、二人で楽に動ける場所を探すことをお勧めします。

 
  ハッピー・ダンシング!  神元 誠/Makoto Kammoto