#339 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その5.魔法を手にしたのも同然)

 

#339 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その5.魔法を手にしたのも同然)

 

今回からダンスウイング52号の連載2回目に入ります。ジェレミーさんのお話からハッと気づかされることが多いですが、実はシンプルで当たり前のことばかりと思いませんか? 「それはそうだ」と思える箇所では、私の翻訳を自分の親しんでいる言葉に置き換えてみるのも良いかもしれません。

 

 

ダンス――遥かにうまくなるための秘訣(2回目記事より)

 

ダンスで思うように動けていますか? 完璧ですか? 同じ問題で困っているということはありませんか? もしお困りでしたら、この記事を読んでください。あなたの知らない社交ダンスに応用できる動きの秘訣が書かれています。下に示すボディ・チャンスの7つの原理を応用するなら誰でも、これを知らない人よりはるかに有利になることでしょう。

その7つのボディ・チャンスの原理とは、

 

  1. すべての動きは相互依存の関係にある。
  2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
  3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
  4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
  5. 動きは古い感覚に支配され、新しい考えで動くことはまれである。
  6. 動きは緊張を増やしてではなく、減らすことで変わる
  7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。(お断り:「体内に備わっている」→「体内で調整される」に変更しました)

 

前号(注:初回記事)では、姿勢が悪いと引き起こされる問題は1~3の原理に含まれることを説明しましたが、今回は残りの4~7の原理を探り、ダンスでの自然な動きの取り戻し方や、苦痛を引き起こしたりバランスを崩したりする問題の回避策を見ていくことにしましょう。

 

原理4.頭部の動きは脊椎運動を支配する

アレクサンダーが発見したのは、私たちの頭の置き方で体の他のすべての動きが変わるということでした。これは、あまりにも分かり切ったことで、むしろ、広く理解されていないことの方が理解し難いことです。(理解されていない)その大きな理由として思い当たるのは、この原理が正しいかどうかを知るには、自ら体験しなければならないからかもしれません。アレクサンダー・テクニークに行くと、先生が手を使ってそれを体験させてくれ、それは本当にいい感じなのです。あなたも習いに行って体験すると、同じように感じることでしょう。

実に殆どの人は、不必要に力を入れて首の下の筋肉を緊張させています。その結果、背骨、胸、そして骨盤を押し下げていますので、そうした首の押し下げを止めることで、とても軽く楽になったと感じることができるからなのです。ですから、ダンスでも、もっと自信を持てることでしょう。

 

首の直下には、人体筋肉の中でももっとも繊細な筋肉が10個あります。これらの筋肉の主な役割は頭部のポジションを感知しコントロールすることで、車で例えるならパワステの役目をしています。頭部を実際に動かす役割はもう少し大きな筋肉が担っていますが、その動きは、これら10個の筋肉からの情報に基づいています。

自然はどうして頭部と背骨の関係をこのように創造したのか実に不思議ですが、第1の理由として、ここには生命に関わる感覚が備わっていることが考えられます。頭部は視覚・聴覚・嗅覚・味覚が集まる「中央司令部」なのです。こうした感覚は外界との接触に不可欠ですから、興味を引く匂いや味、目に入ってくるもの、そうした感覚に導かれて自然と動きたくなるものなのです。

第2の理由として、どんなものでも頭部が前にある点です。汽車のエンジンが先頭についているのは、そこからすべてを引っ張るからです。面白いことに、私たちの体も同じように動いており、頭部が体を連れて行き、その間、背骨や脚部の筋肉が力を出して動けるようにしています。

このことを簡単に理解するには、這ってみることです。畳の上で四つ這になって動いて見ましょう。そのとき、お友達に頼んで頭を連れて行ってもらってください。その次は、お友達のリードに逆らってみましょう。このとき首に余分な力を入れないようにします。

 

この実験をしてみると、頭の動きをコントロールしない限リボデイの進む方向を決められないということがわかる筈です。ちょっと不思議にも思えるこの方法はロデオでも使われており、カウボーイが会場に引き出された牛に最初にすべきことは、牛を捕まえ、首をひねることです。そうすると牛の胴体もひねられて倒れるからです。でも気をつけてください、あなたが牛にひねられないように!

よって、あなたが何かアクションを起こそうとするときには常に、頭と背骨の動きが結びついているという、この重要な原理を思い出して体を使うようにしてください。これをすると、あなたは魔法を手にしたのも同然、ダンスの成績はぐっと良くなることでしょう。

これはシンプルな方法ではありますが、使いこなすには経験も練習も必要です。

(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第2回記事から)

 

私も魔法を手に入れました!

私たちもアレクサンダー・テクニークに通っているとき、この四つ這いの実験をさせられました。妻は四つ這いになった私の頭を支配し、好きなように動かして楽しんでいました(笑)。頭部を支配されると本当に思ったようには動けません。この話になるといつも思い浮かべるシーンがあります。それは、時代劇や昭和の初めの映像で、悪いことをした子供の耳を母親が捕まえて叱っているシーンです。完全に子供をコントロールしています。

 

「どんなものでも頭部が前にある」の話を考えてみると、「ちょっと待って。オウムガイは後ろ向きに進んでいるよね!」などという考えが湧いてきましたが、まあ、何事にも例外はあるものです。それ以外の動物で後ろ向きに進むのは思い浮かびません。確かに、頭が先頭になって動いています。

 

私のライズに対する考えが変わったのは、「頭部が体を連れて行き、その間、背骨や脚部の筋肉が力を出して動けるようにしています」の、この一文を読んでからだった気がします。それまでライズするときは「下から上に」、つまり、

【足で床をプレス】 → 【フット&レッグ・ライズ】 → 【ボディ・ライズ】 → 【ライズ完了】

の考えでした。この考え方はダンス界で広く使われている気がしますが、私の場合、どうもライズしたバランスが悪く、そのバランスを調整するため首に力が入っていました。そこで、「頭部が体を連れて行く」考えを応用し、

【頭が上がろうとする】 → 【ボディ・ライズする】 → 【フット&レッグ・ライズする】 → 【ライズ完了】

のようににすると、それまでよりライズがずっと楽に、かつ、安定するようになりました。しかも以前よりライズが高くなりました。

 


ライズが変わると同時に、「頭部」を意識すると他の様々な動きが、それまでより遥かに軽やかになったのですから、ジェレミーさんの言うように、確かに「魔法」を手にしました!

今では、サークルでもこの考え方を教えていますが、なかなか効果的です。同じライズでも【頭からライズする】と体全体が軽いのです! この考え方は拙書「「社交ダンスがもっと好きになる魔法の言葉」でも紹介していますが、ここでは、このブログのQ&A(#280 質問【その1】(Q1-Q10) )で書いたことを、もう一度書き出して紹介しましょう(一部変更を加えています)。

 

 

Q10. なかなかつま先で立てず、立てても持続ができません。
持続させるにはどうすればいいでしょうか。 (神奈川県 女性)

 

A10. 実は、「ヒールを上げて」トウに上がろうとするだけでは、バランスが崩れることが多くあります。「ヒールを上げる(フット・ライズ)」する際は、「ボディ・ライズ」を伴わないと上半身と下半身のバランスが取れないため、トウで立つのが困難になるのです。

 

下から積み上げるより最初に頭を浮かせる気持ちで!

ここに4つのブロックと1本の紐があります。4つのブロックを真っすぐ積み重ねるのと、紐を真っすぐ垂らすのでは、どちらが簡単でしょう?

 

答えは聞くまでもありません。ブロックを重ねる場合、前後左右のずれを確かめながら作業しなければなりませんから、慎重さが求められ、時間もかかります。もし、一つがずれると、次のブロックは逆の方にずらさなければ崩れる危険性が出てきます。しかも、その時点で4つのブロックは真っすぐではなくなっています。

ダンスでも同じで、両脚部から始まり腰→胴体→頭の順に真っすぐしたつもりなのに、先生から「真っすぐ立って」とか「曲がっている」と注意を受けることになります。これは、自分で気づかないどこかでずれが生じているからです。

紐の場合は別です。紐の片端を持ち上げれば、スルスルっとまっすぐな紐ができあがるのですから。この持ち上げられた紐のように、自分の頭を持ち上げ、その下に胴体→腰→両脚部がぶら下がるイメージを持つと、楽にまっすぐな姿勢を作ることができます。

 

すべての筋肉に協力してもらう

難点は紐の様に誰かがつまんで持ち上げてくれるのではなく、自分でやらなければなりません。それに、頭だけで持ち上げることはできません。では、どうするか?

上にあげようとする頭を、その下にある首から足先に至るまでのあらゆる部位の筋肉にサポートしてもらいます。一部の筋肉(例えば首とか胸)だけに頼ると歪みを生じますし、どこか一カ所でも休んでいると、それも歪みを起こします。

コツは、最初に「頭が浮いて行く」とイメージします。次に、そのイメージを実現するために、あらゆる筋肉に最小限の協力をお願いします。体全体でも、やはり、最小限の力で立とうとすることです。そうすると、力まず、バランスのよい姿勢ができあがります。

この「最小限の力で」は「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」では、「完璧な形とは、最小限の筋肉を使いつつ安定していられる垂直な形の事です」という言葉で説明されています。(参考:#276 アービンが遺したもの  第1章 まっすぐ立ちましょう(前半))

頭が体全体に向けて「ライズするよ」とメッセージを発信するや否や、足先から首までのあらゆる筋肉が「了解! 任せて!」と、瞬時に協力すると軽やかなライズができます。「瞬時に」ですから、頭と体の連携に一瞬でも時差ができると、歪みが生じるので注意しましょう。

 

足だけでライズすると重くなる

分りやすい実験として、足だけ使って、その場でライズしてみて下さい。きっと、体が重く感じられると思います。これが「下から積み上げる作業」で、かつ、「一部の筋肉だけ」に働いてもらった形です。

この実験をすると、「頭から上がる」、「頭の下に体が吊り下がる」方法が理に適っていると納得されることでしょう。最初に頭頂部から上がる練習をしてください。

 

足首が硬い人へのアドバイス

足首が硬くてヒールがあまり上がらない人は、高く上がろうとするより、バランスを取る方に集中しましょう。まず、首、肩、肘の力を抜き、股関節を楽にします。それからバランスの取りやすい目線の高さを探すと良いと思います。

足首が硬いと思っている人は、トウに上がったら「足の甲を前に出す」と思ってみてください。考えていた以上に高く上がることでしょう。

このように、何かのアクションをするとき、その方法はひとつと限定せず、別の形からアプローチしたり考え方を変えたりしてみると、楽しい結果が待っていることがたくさんあります。自分でも工夫してみましょう。

 

頭の話から足まで来てしまいましたが、次回はきちんとアレクサンダー・テクニークに戻りますからご安心を。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)

#336 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その4.体に悪いことを知らずにしている)

 

#336 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その4.体に悪いことを知らずにしている)

前回は「ボディ・チャンスの7つの原理」から、第1の原理「すべての動きは相互依存の関係にある」を見てきました。今回は第2の原理「有害な動きは概ね知らないうちに行われている」に入ります。初めに7つの原理を抑えておきましょう。

ボディ・チャンスの7つの原理

  1. すべての動きは相互依存の関係にある。
  2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
  3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
  4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
  5. 動きは古い感覚に支配されている。新しい考えで動くことはまれである。
  6. 動きは緊張を減らすことで変わる。増やしてではない。
  7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。

 

 

 

 

 

 

 

 

原理2.有害な動きは概ね知らないうちに行われている

これはボディ・チャンスの原理1に関連しています。なぜなら、私たちは体全体に注意を払わないため、体のどこか他のところに悪い影響を及ぼす動きをしても、そのことに気づかないのです。

そうした有害な動きの原因は、例えば、足はどこに置くべきとか、腕をどう回すかなどのように、体の一部にしか注意を払わないことにあります。特定の部位だけを動かしているつもりでも、実際には、無意識のうちに頭部に、背骨に、胸に、骨盤になんらかの影響を与えており、それが習慣化してしまうと、もはやその有害な動きに気づくことはありません。

こうしたことは、少し考えるとわかると思います。例えば、世の中には首や背骨が痛いという人がたくさんいますが、もし、その根本的な原因がどこにあるか分かったなら、きつと、その悪しき習慣を止めることでしょう。つまり、直せないということは、その原因に気づいていないということなのです。こうしたことは実際の踊りにも当てはまります。タイミングが合わない、バランスを崩す、あるいは合図をミスってばかり、などということが起こり、いろいろやってみても解決しない ――  読者の皆さんにもこうした経験はありませんか?

この「原理2」の観点からすると、それは原因を理解できていないということになります。もし原因が分かっていれば解決していてよい訳ですから、解決できないということは、解決するための情報を持っていないということに等しい訳です。そうした解決法を知るには、やはり専門家を尋ね、自分の体に何が起きているのかを理解し、正す方法を分析してもらう必要があります。

(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

 

…確かに問題解決に専門家を尋ねるのは一番良い方法に違いありませんが、読者の皆さん全員が東京や大阪のボディ・チャンス・スタジオ近くに住んでいる訳ではありません。アレクサンダー・テクニークを考え出したアレクサンダー氏は自分の力で解決策を見つけた訳ですから、「記事を通して読者自身が何らかの解決方法を見つけられるようにして欲しい」などということをジェレミーさんにお願いしながら進行して行ったのでした。

アレクサンダーに通い始めると私たち夫婦の会話にアレクサンダー・テクニークの話がどんどん入り込んできました。例えば私が「電車で座席から立ち上がるとき、頭部を意識すると確かに楽に立てた!」と話すと、妻が「洗濯物を干すとき力を入れなくて良い方法を見つけた!」という風にです。こうした自らの実験を通して、それをダンスにどう応用できるかを話し合いました。自分たちのダンスの為には勿論ですが、いかにサークルの人達を上手にできるかをいつでも考えているのですから。

 

 

原理3.動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす

私たちの健康や精神状態は、食事によって大きく左右される ―― これにはどなたも反論しないと思いますが、この食事と健康の相関関係と同様のことが体の動きと体においてもあるということは余り知られていません。なぜなら、私たちは基本的に動きに関する知識が殆どなく、動きの変え方を知らないからです。

食べ物の場合、その影響の仕方は容易に理解できますし、炭水化物、プロテイン、ビタミンにミネラルなどと分析も可能です。しかし、体の動きに関しては、何をどのように学べれば良いのでしょう。

腕の動きがどのように腎臓に影響しているか、なぜスランプ時は疲れるのか、あるいは、姿勢の大切さはなんとなく分かっていても、呼吸、血液循環、視力、消化、心拍数、血圧、聴力、その他、実に多くの体のシステムが神経筋肉系の緊張レベルによって大きな影響を受けている、という事実をご存知だったでしょうか? これを、使い方が機能に影響を与えると言い替えることもできます。即ち、体調の整え方が体の他のすべてのシステムに影響を与えるということです。

でも本当にそうでしょうか。本当に、動きの質の違いが消化や呼吸、あるいは、心臓の動きに影響を及ぼしているのでしょうか?

この写真を見てください。立っているだけなのに背骨を縮め前屈みになっています。消化経路を激しく圧迫するこの姿勢が、この人の消化機能に何も影響を与えていないと思えますか?

私があなたのお腹の上に乗った方が、あなたのお腹の働きは良くなりますか? 勿論、そんなことはありません。でも、筋肉で胸を押し下げ、腹部を圧迫するこの姿勢は、お腹の上に誰かが乗っているようなものなのです。

呼吸で考えてみましょう。体をぎゅっと締め付ける方が肺の中に空気がたくさん入ってきますか? この答えを探すのに大学教授に頼る必要はありません。体が圧迫されていては深い呼吸は出来ませんから、浅い呼吸を頻繁にしなければならず、それにより、多くのエネルギーを消耗し、疲れが増します。僅かながらも血中酸素濃度が下がるため思考能力の低下も考えられます。写真のような姿勢では、頭部、首、胸などで動脈や静脈が不必要に押さえつけられるため、心臓は必要以上に懸命に働いて血液を送り出さなくてはなりません。

 

こうした小さなことが積み重なると、疲れたり、精力を奪われたり、物憂い感じに襲われたりして、物事を積極的に行なうことができなくなります。焦燥感に駆られたり、不眠に陥ったり、神経エネルギーを消耗したり、考えがまとまらなかったり、興奮で疲れ果てた感じになったり、といった別の形で体が反応することもあります。そうしたとき、私たちは、ある種の「頑張らねば」という気持ちで頑張ってしまいます。勿論、全員がこうした状況に陥るとは限りませんが、このちょっぴり誇張された写真によって、いかに自分の運動パターンが健康や精神状態に大きな影響を及ぼしているかを理解して頂けたことでしょう。

では、こうした3つの「動きの原理」に対する対処法はないのでしょうか? 勿論あります。ここから、アレクサンダーが発見した、頭部の動きが脊椎の運動を支配する話が始まるのです。

次回は、より素晴らしいダンスをするには「動きの原理」をどのように使うか ― そうしたことを探っていくことにしましょう。

(「ダンス――遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

 

⬛第1回記事をPDFで読むことができます

昔から「姿勢が悪いと体に悪い」と言われています。ダンスが健康に良いとする医学レポートがありますが、その要因のひとつに姿勢が含まれていることは間違いなさそうです。そして、ジェレミーさんの具体的な説明を聞くと深く説得されます。それにしても、腕の動きと腎臓の関係など考えたことはありませんでした!

さて、以上がジェレミーさんの1回目の記事です。面白くなってきましたか?

新しい発見を感じながら読んでくださっている人が一人でもいるとうれしいです。翻訳している最中の私は内容を楽しむ余裕もなく、読者に分かり易い日本語にするにはどうしたら良いか、そればかり考えていました。いかに記事の内容が素晴らしくても、翻訳が読みにくければ読んでもらえなくなるからです。

Dance Wing Vol. 51に掲載された、この1回目の記事をPDFで通しても読むことができます。また、PDFでは英語の原文も紹介しています。読まれる方は最後のページから逆読みてください。English text available in PDF attached herewith.

Download (PDF, 1.12MB)

 

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

ハッピー・ダンシング!

(つづく)

#335 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その3.動きの原理を知っていますか?)

 

#335 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その3.動きの原理を知っていますか?)

前回はジェレミーさんの第1回記事から「パートナーは二人いる!」を紹介しました。今回はその続きに進みましょう。

 

動きの原理を知っていますか?

ではここで、人間の体のすべての動きを司る原理についてですが、

 

  • 例えば、頭が脊椎の動きを支配していることを知っていますか?
  • 例えば、頭が脊椎の動きを支配していることを知っていますか?
  • 姿勢の問題は頑張るより頑張らない方が解決することを知っていますか?
  • 例えば、体は遺伝子学的に完璧な動きが出来るようになっているのを知っていますか?

もし、知らないものがありましたら、是非この先も読み進んでください。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

当時の私には「姿勢は頑張らない方が良い」というのは初耳だった気がします。しかし、その2年後、オリバーの「アービン・レガシー」を翻訳しているときに最低限の筋肉で立つという説明を見つけ、今では、それが真理以上の真理と確信するに至っています。「アービン・レガシー」(「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」)から、その部分を紹介しましょう。※ #276 アービンが遺したもの では、書籍化される前にダンスファンに連載された記事を掲載しています。

 

第1章 まっすぐ立ちましょう

 ダンステクニック

ダンスに関する限り、どんな事をするにおいても、私達は自分の体を可能な限り完璧な形にしておかなければなりません。それは、正確にはどういう事を意味しているのでしょう? 完璧な形とは、最小限の筋肉を使いつつ安定していられる垂直な形の事です。では、安定はどうやって得られるのでしょう? 正しいポスチャーの基本の形は骨格から得られます。背骨を少し伸ばすことで、背骨を支える筋肉の働きを向上させ、かつ、最小の動きにすることができます。背骨をできるだけ垂直にすることで、筋肉に余計な仕事をさせないで済みます。すると、訓練を受けている筋肉組織が自動的に体を支えようとする機能を引き継いでくれます。勿論、その時すでに使われている筋肉は使うことはできませんが。

 

良いダンスをしようと思ったなら、最低限の努力でポスチャーを作り、いつでも自分がしたい動きのために、必要な筋肉を自由に使えるようにしておくことが絶対条件となります。そうしておけば、多少バランスを崩しても自動的にバランスを取り直せるからです ― 体が、バランスを保つための(正確には、倒れないように!です)助けを求めると、脳は他の筋肉に助けるよう指示するからです。しかし、そうした事態が起こると、私達の動きは非常に制限されてしまいます。助けに出動させられる筋肉は、本来、回転やスウェイや方向転換、それから、ボディ・ライズする時に必要な体の中からの動きに使いたいのですから。

 

ジェレミーさんの記事の続きを読んでいきましょう。アレクサンダーがこの原理を発見した経緯が書かれています。

 

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー

1889年、オーストラリアのメルボルンに名の知れた俳優がおりました。彼は、仕事中に声が出なくなってしまったのですが、おかしなことに、日常の会話でその問題は起こりませんでした。

そこで、俳優の仕事が続けられるよう、医者や発声の先生など、頼りになりそうな人なら誰彼なしに尋ね歩いたのですが、思うような成果は得られず、遂に彼は、人に頼らず自分で解決しようと決心したのでした。そして考えたことは、ステージ上で声が出なくなるのは、自分が体に対して何かおかしなことをしているからではないかということでした。そこで、鏡を取り出し自分の姿を観察してみると、驚いたことに、舞台の上の姿は普段話すときとはまるで違う姿をしていることに気づいたのです。舞台では首を引いて押し下げ、胸を張り、背中を縮め、脚部に力を入れているのでした。

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander 1869-1955)という名のこの俳優は、10年にわたり3つの鏡を使いつつ何千時間も費やした結果、自分の体を司る幾つかの原理を発見しました。そこで、現在、世界的に認められているアレクサンダー・テクニークをつくることにしました。今日では36カ国以上の国々で数千人の先生が教えています。

1973年のことです。ノーベル医学賞を受賞したニコラス・ティンバーゲン(Nicholas Tinbergen)氏は、その授賞スピーチの中でアレクサンダーの発見について次のように語りました。

「医学的訓練を受けていない一人の男が示した洞察力、知性、そして、粘り強さの話は、医学研究、及び実施に関する最高の発見のひとつです」と。では、アレクサンダーが発見したものとは何だったのでしょう?

 

ボディ・チャンスの7つの原理

ここに私が分類した7つの原理があります。これを組み合わせることでもっとも簡単でもっとも複雑な人間の動きを理解することができます。これらは100年以上も前に発見されたことですが、それが最近の、特に神経科学の分野に於ける科学者達によって立証されているのです。あなたたちダンサーは特にそうした科学を知る必要はありませんが、体をコントロールするこのボディ・チャンスの原理を知っておくとよいでしょう。優れたダンサーは自然にそうしたことを理解しているのです。その原理とは――

  1. すべての動きは相互依存の関係にある。
  2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
  3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
  4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
  5. 動きは古い感覚に支配されている。新しい考えで動くことはまれである。
  6. 動きは緊張を減らすことで変わる。増やしてではない。
  7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

 

ジェレミーさんに記事を書いては貰ったものの、それまで簡単な英語にしか接してこなかった私には今まで目にしたことのない単語が山のように次々と飛び出してきて、あっという間に原稿の前で遭難しそうになりました。その一方で「仕事だからやらねば!」と、辞書とにらめっこしながら必死になると、案外頑張れる自分がそこにいることを発見しました(笑)。

振り返ると、この7つの原理の1と2の訳は、あまり上手くできていない気がします。原文を尊重して伝えようとするあまり、口が回らなくなっている感があります…。1番目は「あらゆる動きはどこかに影響を与えていること」で、2番目は「知らない間に、結構体に悪い動きをしている」ということですが、更に墓穴を掘らないうちに、その1番目を見て行きましょう。

それにしても、この7つは「原理」なので当然と言えば当然なのですが、より質の高いダンスを自分自身の中に見いだすには、繰り返し読み、じっくり考えるに値すると思います。

 

 

原理1.すべての動きは相互依存の関係にある

ダンスでは足や腕、あるいは体や頭などの特定の動かし方を考える必要がしばしば出てきます。それはダンスを習う上では当然で必要なことですが、そこには大きな危険も待ち受けています。もしあなたが、懸命に体の一部をどうにかしようとし過ぎ、しかも、それが体全体に及ぼす影響について何も考えずに行ったとしたら、知らないうちに体の他の部位にも変化を起こしてしまうことでしょう。

そうして気づかないうちに起こった変化は、時として、後々に問題を起こすことがあります(ボディ・チャンスの原理2)。例えばそれが、胸の締め付け感だったり、どこかにずきずきと痛みを感じたり、バランス感覚を失ったり、いつも変な方に曲がってしまったりと、知らない間にそうしたことが起こるのです。

このような場合、専門家に詳しい分析と原因究明をしてもらわなければなりませんが、概ね、原因は自分が想像もしないところにあるものです。しかし、動きの原理を理解し、その応用方法がわかると、動きにまつわる問題は速やかに解決されることでしょう。従って、体の動きの学習は、常に体全体の見地から行われなければなりません。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

原稿を訳しながら、「ブラジルで1匹の蝶が羽ばたけば、遠く離れた場所にも影響を与えている」とする「バタフライ効果」のことを連想しました。また、「クレオパトラの鼻が低かったら歴史は変わっていた」のような話もあります。そうした話から比べると遥かに規模の小さな自分の体のどこかを使うと、それが他の部位に影響を与えていても不思議ではありません。

そう考えると、例えば「腕を上げればホールドになる」と考えるのは短絡的であることが分かってきました。そして、ホールドするときは頭蓋骨や背骨のこと、あるいは、肩や脇周辺の筋肉のこと、さらには足裏にまで意識を広げると違ったものになることが分かってくるのでした。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)

#334 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その2.パートナーは二人いる!)

 

#334 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その2.パートナーは二人いる!)

 

ショッキングな体験

 

🔷背骨は頭の後ろについていなかった

アレクサンダー・テクニークに通い始めた頃、幾つかの驚ろく経験と発見をしました。そのひとつが、頭部に対する背骨の位置を知ったことでした。

骨格模型でその位置関係を見せて貰うと、背骨の先端は頭部の中央付近にありました(下図参照)。大まかには、背骨両耳の中間付近にありました。それまでの私は漠然とながらも、「背骨は首の後ろ側で後頭部とくっついている」イメージを持っていたので、「とても大きな勘違いをして生きて来た」ことに、とても驚いたことを覚えています! 

そして、この位置関係が分かるとダンスにおける頭部の使い方が変わります。

 

 

🔷投げられたボールを受け取らない?

目黒のボディ・チャンスに通い、個人レッスンを受け始めた当初の戸惑いのひとつに、ボール投げ遊びがありました。先生と3人で 部屋をぐるぐる回りながらボールを投げ渡すゲームです。

その日、最初に先生が妻に向けてボールを投げ、妻はボールを受け取りました。妻はそれを先生に投げ返す選択肢もありましたが、私に投げてきました。私は当然それを受け取りました。そして、それを先生に投げると・・・先生はスルーして受け取らなかったのです! 

唖然としている私たちに向かって先生が一言。

「受け取らないという選択肢もあります」

 

ガーン!

 

「なんじゃ、そりゃ。バカにしてるのか!」とまでは思いませんでしたが、

「そんなこと分かってるわい! 投げてくれたから、失礼にならないようキャッチしてるんじゃないか!」とって感じでした。

 

でも、そこがミソでした。この遊びで分かったことは、「筋肉の使い方も同じで、使わなくても良い筋肉を無意識のうちに使っている」という驚くべき事実でした。

 

例えば、私の場合パソコンに向かっているときの姿勢を見てもらうと、肩や肘に力が入っていると指摘されました。その力を抜くには、まず、肩のあたりを意識的に解放し力を抜こうとしなければなりません。力を入れてしまうのが習慣化されてしまっているからです。肩のあたりの筋肉を意識的に開放するのは、意識的にボールを受け取らないのと同じ作業なのでした。

 


これは当然ダンスに役立ちます。
例えばスタンダードでパートナーとホールドする時、男性は両手を広げてホールドの形を作り、女性は右手を男性の方に出す動作をします。あなたにもチェックしてもらいたいのですが、ホールドするときに肩も上げていないでしょうか? 「肩も」というより「肩を上げながら」手や腕を上げていませんか? もし、そうしていたら、ホールドをするのに、肩を上げる必要はあるでしょうか?

実験すると、ホールドするときは単に手や腕(肘)がホールドの位置に浮かび上がれば良いだけと分かります。そして「肩を上げる必要がない」ことが分かると、意識的にでも「肩を使わない」ようにすることができます。それまで無意識に使ってきた肩の筋肉が解放されると、それまでのホールドとは打って変わって、ナチュラルなホールドが誕生します。

 

 

🔷ダンスを知らない先生がアドバイスできるのか?

ある日、レッスンの中の実験として二人で踊ってみることにしました。その日は狭い部屋だったのでワルツをほんの数小節だけです。見てくださった先生は社交ダンスをまるで知りませんでしたが予備歩と 続く3歩を踊る間の私の意識の持ち方を質問してきました。

鋭い指摘にドギマギ答えた私に、次は、「頭蓋骨を持ち上げ、こんなことを考えて踊ってみては?」とヒントをくださいました。

 

社交ダンスをまったく知らないアレクサンダー・テクニークの先生のアドバイスは、ダンスの先生がするようなアドバイスとは全く違うものでしたが、その通りにやってみるとまるで違う踊りになったので。妻と二人、大変驚きました。しかも、別の機会に別の先生とでも同じことが起こりました。

そうした経験を何度か繰り返す中、

「アレクサンダー・テクニークの先生たちはあれだけ高度なアドバイスができるのだから、ここのトップのジェレミー・チャンスさんなら間違いなく日本のダンサーのために素晴らしいアドバイスができるに違いない」 ― と確信するようになりました。

3か月間の体験で確信を得た私は、後日、「ボディ・チャンス」主催者のジェレミー・チャンス氏とアポを取り、ダンサーのための記事を書いて欲しいとお願いしたのでした。

私たちはジェレミーさんの個人レッスンは受けていませんでしたし、習った先生に記事をお願いする選択肢はありましたが、敢えてジェレミーさんに依頼したのには理由がありました。私は、関わっていた隔月誌ダンスウイングをバイリンガルな雑誌にして世界に発信したいと思っていましたので、ジェレミーさんの英語の原稿と日本語の翻訳文を併記することを考えていたからです。

 

🔷ジェレミー・チャンス、WHO?

ここでジェレミー・チャンス氏について、私が知る彼の略歴です。

Jeremy Chance /ジェレミー・チャンス

BODY CHANCEプロコース、 トレーニング・ディレクター。アレクサンダー・テクニークを国内外で30年間指導。『ひとりでできるアレクサンダー・テクニーク』の著者。

1986年からはアレクサンダー・テクニークに関する国際誌『デイレクション』の編集も務める。オーストラリア・アレクサンダー・テクニーク協会(AUSTAT)創設メンバー。オーストラリアではシドニーのNIDA、俳優センター、俳優大学、ミュージッック・コンサーバトリアム、メルボルンのビクトリア大学の芸術学部で指導。1999年から現職。

 

 

 

ダンス ― 遥かに上手くなるための秘訣(第1回)

 

パートナーは二人必要?!

ジェレミーさんから届いた初回原稿には、いくつかのタイトル候補が書いてありました。私はその中から Secret Ingredients of Great Dancing Technique を選び、日本語タイトルとして「ダンス ― 遥かに上手くなるための秘訣」とすることに決めました。

その初回原稿には衝撃的な小見出しがついていました。

ダンスにはパートナーが二人必要です! 

今回はその部分を紹介しましょう。単なるキャッチ―な小見出しではなく、なるほど!と実感されることでしょう。

 

一人で踊っているとき、あなたにはパートナーがいます。また、あなたが社交ダンスを踊っているときパートナーは二人必要です。 一人ではありません。では、その「もう一人」は誰でしょう? 

二人目はもっと大切なのですが、以外と気づかれていません。それは、あなた「自身」です。心と体をひとつにして素晴らしい踊りをしようとする「あなた自身」のことです。

このあなた自身とのパートナーシップが、上手に踊れるかどうかを決定する一番重要なところで、ステップをどの位たくさん習うかということとは関係ありません。また、ダンスのクラスでは心と体の関係を習う時間もないでしょうから、どこか他で学ばなくてはなりません。

ダンスをしていて一番ストレスが溜まるのは、自分の体が思うように動かないことではありませんか? でも、驚かないでください。実は、あなたの体は、あなたが「そうしなさい」と指示している通りのことをしているに過ぎないのです。つまり、上手く行かないのは体に問題があるのではなく、あなたの体に対する指示の仕方に問題があるのです。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

自分と踊るパートナーは一人じゃないと知らされ、翻訳しながら非常に驚いている自分の中にとても納得している自分がいました。いつも自分と対話しながら踊っている自分を感じていたからです。それが 「もう一人のパートナー」 と認識できると、さらに違った対話ができそうな気がしますし、この考え方は、恋人同士でも夫婦でも、家族にも応用できると思いました。

 

「もう一人の自分」をどこに感じるか――当然、「自分の中」なのですが、少し形態を変えて遊んでみても面白いと思います。その一つの遊びとして、もう一人の自分を「肩車している」とイメージするとどうなるでしょう? 

「自分」が自由に踊るには「もう一人の自分」には勝手な動きをされては困ります。勝手に体を捻ったり傾けたり、あるいは、あちこち顔を動かされたりすると動きが邪魔されてしまうので、肩の上でなるべく静かにしていて欲しいと考えると思います。

この場合の「自分」を「下半身」に、肩車されている「もう一人の自分」を「上半身」に置き換えて踊ってみると、いままでより静かな踊りになることでしょう。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)

 

#333 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その1.潜入捜査開始!)

 

#333 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その1.潜入捜査開始!)

 

プロローグ 

近年の私たち夫婦のダンス活動におけるアレクサンダー・テクニークの存在はとても大きなものとなっています。自分たちが踊る上で役立っているのは勿論ですが、教える側に立ったときにも大きな力を発揮しおり、生徒さんが抱える問題の原因を探っていくと、目の前の現象からかけ離れた所で原因が見つかる場合が多々あります。そうした時、私たちはアレクサンダー・テクニークと出逢ったことに心から感謝します。

日本のどこかで「より良い、より質の高いダンスを自分の中に見つけたい」と模索している人たちがきっといるに違いありません。そうした人たちに向けてこの「私とダンスとアレクサンダー・テクニークと」を書いていきます。

 

不思議な出会い

私がアレクサンダー・テクニークという言葉を知ったのは、2007年のことです。その年の冬、娘が ―― 

「面白いから行ってみて。その人もお父さんに会いたがっているよ。お金は払ってあるからね」

と、占い師(←最適の表現ではない)にアポを入れてプレゼントしてくれました。そこで、ひょいひょいと表参道の Healing Beauty Salon へ出かけて行き、チャメリさんという人にお会いしました。そして最初に交わした言葉がこれです。

 

チャメリさん:今日はどのようなご相談ですか?

:いやいや、私の相談ではありません。娘が、あなたが私に会いたいと言っていたというので、会いに来たのです。(笑)

チャメリさん:そうなんです。お嬢さんが来てくださったとき、私はお父さんにある本をお薦めしようと思っていました。

そうして教えてくれたのが「アレクサンダー・テクニーク」という本のことでした。どんな本か全く見当もつきませんでしたが、「きっと役に立つと思います」と勧められ、また、私も何かを感じたので、その夜のうちにアマゾンで2冊ほど注文しました。

しかし、届いた本を手にしてみると、残念ながら私には読みにくく感じたのでそのまま放っておくと、妻が読み始めたのです。何かを感じたのは妻だったかもしれません(汗)。何はともあれ、アレクサンダー・テクニークとの出会いのきっかけは、全く知らない一人の占い師さん、正確にはスピリチュアル・カウンセラーさんからだったのです。

 

潜在意識のなせる業?

アレクサンダー・テクニークの本を買って暫くしたある日、ダンスファン編集部の人が、「先日アレクサンダー・テクニークのことを話されてましたよね。実は、その体験の招待状が編集部に届いているのですが興味ありますか?」と尋ねてきました。「はい、あります!」とすかさず答えたのは、勿論、妻でした。

そのときのレポートは2008年ダンスファン4月号 に掲載されました。レポートの中含まれている主催者のジェレミー・チャンス(Jeremy Chance)氏から別途ダンスファン読者へ向けて頂いたコメントを抜粋して紹介します。

 

綺麗にスピーデイに踊れるようになりたいと考えたことはありませんか? そんなとき、私たちのアレクサンダー・テクニークを役立ててみてはどうでしょう。安定感を得る秘訣は脊椎と頭の関係にあります。

安定性とは中心軸(頭、背骨、肋骨)の脊椎に備わった機能なのです。身体の動きとは背骨と四肢の機能ですから、安定性と柔軟性を保ちながら踊りたい人は、背骨と四肢の動き方を研究する必要があるのです。そのため、ヨガや様々な格闘技の中で研究されてきましたが、ダンスにも、このアレクサンダーテクニークを実践応用することは可能です。

アレクサンダーは人の動きに関する実にシンプルで深遠な真実を発見した人です。それは、頭の内部に背骨の動きを支配する要素があり、そして背骨の動きが四肢の動きの質を決定するということです。これを理解するとダンスが上達します。では、どうして頭と背骨の関係はそれほど重要なのでしょう? わたしたちの頭の動きは背骨に2通りの影響(背骨を伸ばす、縮める)を与え、背骨が長くなるとバランスがよくなります。それは身体の内部で自然にバランスを整えようとする働きが行なわれるからで、これにより手足が自由に素早く動ける空間が作り出されます。

アレクサンダーのもうひとつのすばらしい発見―それは、私たちの動きのひとつひとつは呼吸、血液循環、消化、視覚など身体のあらゆる機能に影響を与えており、身体を自然な方向に伸ばして戻すと、健康状態も向上するということです。(チャンス氏)

 

■参考:2008年ダンスファン4月号(PDF)

Download (PDF, 624KB)

 

私はこの一連の繋がりを振り返る度、驚くというか感心してしまうのです。

 → 娘のプレゼントでチャメリさんに会いに行く

 → アレクサンダー・テクニークの本を紹介される

 → ダンスファンから招待状を頂く

 → 体験に参加して「ひとりでできるアレクサンダー・テクニーク」の翻訳者片桐ユズル氏のサインまで頂いて帰ってくる。

 → チャンス氏が快くダンサーのためのアドバイスをして下さる。

これは深層意識のなせる業なのでしょうか? そうであるにしてもないにしても、この時点で、私たち夫婦はすでに半歩、アレクサンダー・テクニークに近づいていたのでした。 

 

潜入調査開始!

実際にアレクサンダー・テクニークを習いに行くようになったのは2009年4月です。当時、ダンスウイングという隔月発行誌に深く関わっており、その中でアレクサンダー・テクニークを連載記事として取り上げようと密かに計画していました。しかし、ジェレミー・チャンスさんが言うように本当にアレクサンダー・テクニークはダンスに役立つのでしょうか? 役立つにしても「どの程度」役立つのでしょう。それを体験して実感しなければ記事にはできません。

そうした思いで妻と通い始めることしましたが、正直、最初の頃はよく分かりませんでした。私たちが通ったのは目黒の「ボディ・チャンス」です。そこには、入門者はこれ、初心者はこれという決められたプログラムはなく、毎回、「何を知りたいか」「どんなことをしているときに体がどう辛いか」というような質問をこちらから出し、それについて考えていくのでした。そこで毎回、目黒に向かう電車の中で「何を質問しようか」と頭を悩ますことになりました。与えられるテーマがない形式は案外しんどいものでしたが、最終的には自分の体を見つめるにはこれが最善の方法と納得することになります。

数年後、”Dancing Beyond The Physicality”(マッシモ・ジョルジアンニ著/邦書「マッシモ・ジョルジアンニが教えるダンサーのためのメンタル・トレーニング」白夜書房) を翻訳しているときにアレクサンダー・テクニークとマッシモさんの両方に感心したことがありました。教える側と教わる側のことがこう書かれていたのです。

 

私は習いに来る生徒に、私のところに来るきっかけは何だったのかと必ず尋ねます。生徒たちの目的は何か、何を成し得たいと思っているか、それを知らなくてはならないからです。ですから、誰かがレッ スンに来て、「えーと、スロー・ワルツをお願いします」と言ったとすると、6小節も踊らないうちに止めて、助けを乞うような目つきになることを私は知っています。

このような若者の、はっきりしない態度は理解できないこともありま せんが、一人前のダンサーの取る態度としては受け入れられません。む しろ、私に向かって「あなたのレッスンを受けるというより、私たちの踊りを見て頂き、その上で、私たちに欠けているものを教えて欲しいのです」と言われるほうが好きです。 多くの場合、あなたがレッスンで何をしたいかを理解していれば、目的に到達することができるからです。それが肉体面で直ちには可能にならないかもしれませんが、その後のレッスンを通して、目的到達のため 何をすべきか理解できるようになるのですから。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)