#047 スロー・レッスン雑学(前編)

Spread the love

#047 スロー・レッスン雑学(前編)
(Slow Foxtrot Trivia)

ダンスビュウ2017年2月号に「スロー・フォックストロット雑学」という記事を書かせていただきました。そこで、当時の原稿に少々手を加えて、ここにお届けしようと思います。

 

✅フェザーは「最も高価な」ステップ?

 

 

⬛ロレイン・バリー(Loraine Barry)

ロレイン・バリーさんが、あるレッスンで次のように話しています。

”One of the most beautiful steps that we have in the Foxtrot, one of the most practiced, rehearsed steps that we also do and also probably one of your most expensive steps that you’ll ever learn. ”

「フェザー・ステップはフォックストロットの中でも、最も美しいステップのひとつです。最も繰り返し練習するステップで、きっとレッスンで一番お金もかかっていることでしょう」 ―― このような意味です。

 

なるほど。上手な人のフェザー・ステップがひと味もふた味も違うのは、つぎ込んだ額の違いか! まあ、そんなに単純な話ではありませんね(笑)。

競技選手、そして、世界のトップ・ダンサーであっても繰り返し練習するステップなのですから、趣味で踊るだけであっても、それ程奥深いものであることと知り、謙虚にステップを踏まなければと思います。自分のことです。

 

ロレインさんは元世界チャンピオンです。当時のパートナーはルカ・バリッキ(Luca Barricchi)。そのお二人がレクチャーの中で踊ったと思われる映像を見つけました。フェザー・ステップ ~ リバース・ターン ~ スリー・ステップ ……  僅か16小節ですが、素晴らしいのでシェアします。

 

 

⬛アンドリュー・シンキンソン(Andrew Sinkinson)

彼がゴールデン・バリエーションと呼ぶ一連の動き(下)があります。(ほら、このブログ #042~#045 で勉強したフィガー!)

  • フェザー・ステップ ~ リバース・ターン ~ スリー・ステップ ~ ナチュラル・ターンの3歩 ~ オープン・インピタス・ターン。

 

僅か5つのベーシック・ステップですが、この中には、イン・ラインとアウトサイドの頻繁な切り替わりがあり、女性の左回転と右回転のヒール・ターンがあり、フェザー・フィニッシュがあり、男性のインピタス・ターンがありと、重要な動きの要素が殆ど含まれていますから、流れるように踊るには相当の練習が必要です。

 

 

✅フェザー・フィニッシュが生まれた瞬間

ところで男性の皆さんには、フェザー・フィニッシュでエナメルの靴が引っかかってバランスを崩した経験はありませんか? 私は何度もあります(笑)。しかも気持ち良く踊っているときに限って起こるので嫌になってしまいますが、私の中には、「時代が早ければなあ……」と考えて楽しむもう一人の私がいます。

「どいうこと(笑)?」

 

実は、初期のリバース・ターンは、前半は今と同じですが、後半は男性がヒール・ピボットしていました。今のテキストのクイックステップ「クオーター・ターン・トゥ・L」に出ているヒール・ピボットです。

ところがフランク・フォード(Frank Ford)という人が、そのヒール・ピボットをしようとしたとき、エナメルの靴が引っかかり、とっさに右足をアウトサイドにステップしたのがきっかけで、フェザー・フィニッシュが生まれました。1927年のことです。

この話は「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」(オリバー・ヴェッセル・テルホーン著/神元誠・久子訳/白夜書房)の中に書かれていますが、ビルの最後のレクチャー映像でも、この話が出ています。オリバーも間違いなく観ていたことでしょうが、その映像の中の一部を紹介しましょう。

 

初めにカップル(トニー&アマンダ)が踊るのはフェザー・ステップ ~ オープン・ターン(リバース・ターンのこと)で、このオープン・ターンの後半にヒール・ピボットが出てきます。次にビルがこのようなことを話しています。

「始めフェザー・ステップはロック・ステップを使いイン・ラインで踊っていましたが、ある時、ロック・ステップで靴が引っかかり女性のアウトサイドに出たのがきっかけで今のフェザー・ステップが生まれました。また、今の人がリバース・ターン後半にヒール・ピボットを使うと、「新しいバリエーションだ」と思うかもしれませんが、当時オープン・ターンと呼ばれていたリバース・ターンの後半はヒール・ピボットでした。ところが、ヒール・ピボットで靴が引っかかり、アウトサイドに出たのがきっかけでフェザー・フィニッシュが生まれました」。

 

さて、フランク・フォードの失敗は名を遺しダンスの発展に寄与したことになりますが、「私の失敗はただの失敗」 ―― エナメル靴が引っかかったとき、いつもそう考えて楽しんでいるのです(笑)。

ちなみに、エナメル靴は英語で「パテント/ペイテント(Patent)」といいます。特許を取った製法で作るからだと思いますが、フェザー・フィニッシュの名もパテントを取得したようなものですね(笑)!

 

ハッピー・ダンシング!

 

【関連記事】
 #048 スロー・レッスン雑学(後編)

 

Related Post

#268 ワルツのフィガー 20.クイック・ウィーブ...   #268 ワルツのフィガー 20.クイック・ウィーブ(Quick Weave) 教師用テキストには出ていませんが覚えてしまいましょう。  #267 耳を澄ませば(それで上手くなっちゃう)に出ている「クイック・ウィーブ ~ 左へのシャッセ」を見て、「どっちもワルツで習...
#257 ワルツレッスン雑学1 ラウンド・ワルツ...   #257 ワルツレッスン雑学1 ラウンド・ワルツ(Round Waltz)   ダンスビュウ2017年1月号に「ワルツレッスン雑学」という記事を書かせていただきました。このブログ「私のダンスノート Part 2」では、そのときの原稿に手を加え、3...
#192 クイックのフィガー 11.ジグザグ~バック・ロック~ランニング・フィニッシュ...   #192 クイックのフィガー 11.ジグザグ~バック・ロック~ランニング・フィニッシュ (Zig-Zag, Back Lock Running Finish) 3つのフィガーが組み合わさったアマルガメーションです。総計9歩の中に左と右の回転が含まれています。ジグザグ...
#411「12.さらに高度な技術」   #411「12.さらに高度な技術」 今回は「モダン・ボールルーム・ダンシング」から「12.さらに高度な技術」をお届けします。「さらに高度な技術」を「初心者以上の人に求められる知識」と置き換えると良いでしょう。   目次  ...