#107 セルゲイのレクチャー “The Art of Partnering” (2016)

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#107 セルゲイのレクチャー “The Art of Partnering” (2016)

先日トニー&アマンダ・ドクマン(Tony & Amanda Dokman)のレクチャー映像を紹介しました(#102 トニー・ドクマンのレクチャー “The Moment of Truth” )。そこで、同じく2016年UKコングレスから、セルゲイ&メリア(Sergey & Melia)のラテンのレクチャー映像をお届けします。こうした貴重なレクチャーを日本のダンス界に届けたいとの思いで、撮影側のDSI社と交渉しダンスファン2017年8月号付録にして頂きました。

UKコングレスは毎年、1年の最初に開かれるUKオープン選手権の前夜に行われ、私が知る所では、2本のレクチャー(各30分)と1時間半の対談 Audience With があります。今回のレクチャーはその2本目のレクチャーでした。

前回「私が海外のレクチャーを面白く感じるひとつに、レクチャーする人たちが習ったかつての偉大なダンサーたちの話が出てくることです」と書きましたが、果たして今回は……?

※映像の下にレクチャーの書き起こし(日本語)も掲載しました。太字は私が個人的に気に入っている部分です。

 

セルゲイ&メリアの「パートナリングの芸術性」(映像)

 

 

セルゲイ&メリアの「パートナリングの芸術性」(書き起こし)

 “The Art of Partneringby Sergey and Melia from BDFI Congress 2016

Sergey: 皆さんこんにちは。私たちのテーマは「パートナリングの芸術」ですが、こんなに大きなテーマを語ることができるか不安です。まずは、適切なパートナーを選ぶこと。そして、好きでなくちゃなりません。これが最も重要で、パートナリングの芸術も、そこから始まります。この大きなテーマには2つのポイントがあり、メカニカル的なことと体の内部に関すること。これから、それらについて話していきます。

ここでお断りしなくてはなりません。1週間ほど前、彼女は膝を捻挫しまして、今日はヒールを履くことができません。ティーチャーズ・シューズですがお許しください。

 

🔶フレームの中の自由

それで、パートナリングで重要なのは二人のボディがアクティブ・ボディであることです。そして、最も大切なことは、私たちが子供の時、ロシアでは・・・・・・今はわかりませんが、それでも何かバレエに関したことをしていると思います。何のダンスを始めるにも、必ずバレエの下地を作っていると思います。最初は何といってもフレームが重要ですね? ボディ・フレームを作ってボディのセットアップ。それにより、ポスチャーと堂々とした形ができ、何をするにもコネクションが持てます。

始めのころはボディが固くても仕方がないことですが、ボディの中まで固める人もいます。でも大切なことはフレームの中に自由を感じることです。そうでなければ、踊りに自由が出て来ないじゃないですか。でしょ?

自分たちがしたいアクションの中に、その自由が現れるようにフレームを作りますこれは踊り始める前にやるべきことです。

ポスチャーが必要、プレゼンスが必要、ボディのセットアップが必要、フレームが必要。フレームはアクティブであること(固まっていないこと)。その動きは体の中からです。形を作るのではなく、私たちの中で活動しているものがフレームを通して出てくる感じです

 

どんな動きをする前にも、ボールルームの人たちが行うように、ホールドする前に自分自身の準備ができていなくてはなりません。まあラテンでは、それ程でもないこともありますね。カジュアルにしたいし、男は格好よく見せたいですからね。

それでも、何をするにも、どんなふうにするにも、前提としてボディが活性していなければなりません。さもなければ、コネクションが機能しなくなります。

私たち自身もそうでしたが、コネクションというとホールドにおける実質的なコネクション・ポイントと考えている人たちがいますが、そうすると、私たちもそうでしたが、あらゆる集中も準備も、このコネクション・ポイントに来てボディが完全に機能停止に陥ってしまいます。私からメリアに対しても、メリアから私に対しても。

 

ですから、何かをする前には――もちろん、手を通してできることもありますが、それだと音楽のスピードから外れたり、複雑な振り付けに対応できなくなったりします。よって、アクションを起こす前にボディを通してのコネクションを持つことが必要になります。これが私の心がけていることです。互いに相手に対して自分のボディ・コネクションを機能させているかどうかです。

なぜなら、パートナーのステップやタイミングなどのアクションが理解できると、あれこれ考えなくても、ホールドを通したボディ・リードで彼女に示したり、リードしたりすることができます。わずか1歩でも、ほんのちょっとしたアクションでも、すべてがボディから始まります。

パートナーに向けて、生き生きしたボディがあります。背骨を相手の背骨に向けて意識します。1歩1歩、一瞬一瞬、セトリングしたり、ボディの移動をしたりしても、自分たちが作りたいムーブメントに向けた、生きたコネクションがあります。

 

🔶スペースとは、パートナーをハグするようなもの

そして、もちろん、例えば、違うステップの場合ですが ―― メリアに見せてもらいます。彼女は膝を痛めているので、彼女はできないと話していましたが・・・お見せしましょう。

例えばファンをベーシックの形ではなく、シンコペーティド・ファンや通常のファンをランジの形から入ることがあります。彼女にしてもらうどのステップの前にも、私はボディを使い始めます。ボディを動かしセトルさせてから、彼女に向けて使うので、二人のボディはアクションに向けてコネクションがあるのです。

足を揃えるさせるときも、ボディを通して行います。手を通してではありません。

これは、ある種、動きの調和がよく見えるものですが、ステップに繋がる、ボディ内部のコネクションもあります。そして、私とメリアは違う物の見方をしているので、そうしたものを自分たちで発展させています。

それにはスペースが関係します。二人で作るスペースを埋めるべく、私がボディを投じます。いつでも、スペースを創り出しては活性したボディで埋める作業をします。そして、スペースとは、ある意味、パートナーをハグするようなもので、それを創り出します。

このように私たちの周囲に創り出したスペースを通して、パートナリングを感じます。スペースを通して何かを創り出そうとしています。いつでも、自分がそこにいることを彼女に知らせるようにします。

パートナリングとは、単にパートナーがセトルしたとか、タイミングが取れたとか、指示するというものではないと思います。ミスをカバーし合うこともあります。相手がバランスを崩しそうになっても、ボディでカバーします。勿論、ボディの中の何かとか視覚を使い、彼女が常にそこにいて、自分も常に彼女のためにそこにいることを知らせ、何が起きても大丈夫なようにします。君からコメントは?

 

 

🔶私が誰で何を感じているかを伝えることが

Melia: わたしにとっての「パートナリングの芸術」とは、二人でフロアに投影する美しい映像の美であり、コネクションです。同時に、これは先生たちから教わり、私たちも教えに使っていますが、パートナーに対し「手だけ」、「セットアップしたボディだけ」、「筋肉を使った動きだけ」を与えないことです。いつでもオーラを作ることです。

オーラがドラマチックであること。私は自分でいつでもドラマを作っています。ただ手を出すのではなく、私が誰で何を感じているかを伝えることが大切と思います。彼とのコネクションを通し、彼との動きの中で。セルゲイはスペースのことを考え、私は感情やドラマを視覚化することを考える。二人は違うポイントからスタートしても、それは構いません。大切なのは、そうであっても、二人で一体感のある、二人が一つとなる映像を作ることだと思います。ですから、彼に手を差し出すとき、溢れるばかりの情感が一緒なのです。

 

🔶目的地を知っていること

Sergey: さて、何の練習でも構いませんが、アクションの練習でもタイミング、フォーカス、ボディ、動きの方向、私たちが練習していて相手や動きに対するコネクションを考えないことは、決してありません。考えないと、感情がなくなるではありませんか。ボディの準備の時点で既に創り出すもの、見せたいものにフォーカスし、コネクションを感じています。

私は、いつも車の運転と同じだと思っています。これはとても重要で、私たちダンサーにも非常に大切なことです。車の運転をするときには、どこに行きたいかを知っていなくてはなりませんが、私もメリアも、それと同じことをダンスでしています。いまは、カーナビという便利なものがあり最速とか最短の道をあれこれ教えてくれてその中から、選択することができます。そこで、右に曲がるのか左かと。

でも、最低、あなたは目的地を知っていなくてはなりません。ダンスも同じです。あなたは最終到着地点を知っていなくてはなりません。何を見せたいか、どう見せたいか、パートナーと何を作り出して、目的地に向かって行くのか。目的地がわからないと、うろうろしてしまうではありませんか。それも美しく良い経験かもしれませんが・・・・どこに行くのか、いつ着くのか分からないのではね。ですから、例え練習のときでも、例えホールドひとつにしても、いつでも、自分たちのボディの中から引き出すものを感じている。

感じていない瞬間はありません。

何を行なっても構いませんが、自分の中の生き生きとしたものがパートナーに向けられています。そして、パートナーから私にも。さもなければ、競技会に結びつける練習をしていると感じることはできないでしょう。目指すのは競技会やショーなどですから、それに結びつくような練習でなければなりません。そうした練習をしておかなければ、本番では遅すぎるのです。

そうしたことが、しばしば私の生徒達に起こっています。実際に競技会に来てから踊りの中でどう見せようかとか、ボディ・コネクションをどうしよう、などと突然やりだすのです。宿題をちゃんとやってこなかったら、時すでに遅しです。

たとえば、パートナーがオーバーターンしたあとで、彼女が好きな形になって終わって貰うとして、よくあるのが、私もやっていたのですが、手からのリードを始めてしまうことです。

これは好きではありませんでした。自分を振り返ると、この形は受動的に見えました。私のラインも、手も悪くないですし、パートナーもタイミングも悪くないのですが、好きになれません。体の中が動いていないのす。

 

すでにお話ししましたが、どのステップでも、また、動きの前にも、パートナーに対する自分のアクティブなボディであるようにします。当然、脚部からボディ・センターに繋がる動きのメカニックスを知っていること

それから、最初のステップ、そして、例えばパートナーを回転させ、自分はセトリングし、彼女は回転。

自分のボディ・ウェイトを移すと彼女も移し、私はセトリングして彼女を回します。いつでも女性が最初です。彼女にプライオリティがあり、最初に終え、次に私が何かやりたいことをします。すると次に、何でもすることができます。

 

 

私たちの振り付けでは、どのような踊り方をしても構いません。たとえば、私たちには同じステップがなく、互いに自分たちのボディが作り出す動きに向かって、そして、パートナーに向かってアクティブになる方法を探します。でも、私か彼女、必ずどちらかからスタートすること。これが重要です。他の人をスタートのきっかけにすることはありません。その方が簡単だったりしますが、どちらかがアクティブである方が、ずっと楽なのです。

君がアクティブね。いつものようにさ!

どちらかがアクティブで、どちらかがアクティブじゃないのは非常に易しいですが、それだと、パートナリングが見えません。とても大切なのは、自分自身を動かそうとすることで、誰かのためにやろうとすることじゃない。とにかく、自分自身のために自分を動かすこと。例えパートナーが休んでいても彼女からアクティブなものを引き出さなければならない。彼女の願望、ドラマ、心的状況など、それがどんな言葉であっても。自分のアクティブなボディと彼女のアクティブなボディ。リードしフォローして、共に作り出すことのできるものを。

 

🔶トネ・ナイハーゲンを偲ぶ

さて、皆さんご存じのように、私たちの恩師が他界されましたので、今日は恩師に敬意を表したいと思います。もし構いませんでしたら、メリアのメッセージを読ませてください。

Melia: ご存じのように、トネ・ナイハーゲンが12月末に亡くなり、私たちは彼女に感謝する素晴らしい機会が欲しいと思っていました。ダンスの母のような存在でした。これからも、彼女は私たちの一部であり続けるでしょう。このレクチャーを使って感謝を示すという素晴らしい考えは、ヘーゼルが教えてくれました。そこで、トネを偲び、セルゲイと私からの言葉を述べさせて頂きます。

“トネは仕事に対しても、人生で決めたことに対しても、情熱の塊のような人でした。私たちの母親、指導者、友人、手厳しい批評家、最大の支持者だったトネは、生前、彼女と知り合う機会のあった人たち総てから祝福されています。彼女と合わなければ、今の私たちはないといっても過言ではありません。

15年前初めて習ったステップ以来、引退するまで、いつも側にいてくれました。その間の友情と愛情。私たちがどんなに大変なときも、私たちの一部となって、愛と友情で支えてくれました。彼女は私たちに人生を教え、成長を助けてくれました。中でも、トネは心の規律と、芸術性に対する炎の魂を絶やさないことを教えてくれました。私たちのことを強く信じ、私たちが決して無知や傲慢さの影にならないようにしました。

自分に対する厳しい目を失うことなく、向上し続ける才能を信じること。決して諦めないこと。彼女が私たちに注入してくれた、数多くの教えの中の最も大切なことです。トネは最後まで、本当に素晴らしい、インスピレーションを受けた女性でした。

長い間、信じられない戦いを続けたトネ。このように強い人を他に知りません。戦い続けながらも、彼女の周りの人たちとの時間も持ったのです。

私にはわかりません。人生はなぜこのようになっているのでしょう。もっとも大切な人を失うようになっているなんて。それを当然ということなどできません。

私たちにはあなた思い出が残り、あなたの優しい魂の炎が私たちの中で輝き続けます。涙が残る、あなたのいない世界は小さく感じられます。

愛するトネ。どれほどあなたを愛してるか、どれほど感謝していることか。このことを、あなたが誇りに思ってくだされば嬉しいです。私たちの心の中は大きなむなしさが残り続けることでしょう。大好きでした。”

 

ここで、トネを偲び彼女が作ってくれたルンバを少し踊らせてください。

<ダンス>

最後に、このままお立ち頂き、彼女の天国での新生活を祝い1分間の拍手を捧げたいと思います。お願いいできますでしょうか。ありがとうございます。

MC: ラテン・アメリカン・ダンサーお二人の素晴らしい考え方、そして、メンタル・アプローチに対する考察でした。非常に難しいテーマにアタックしたセルゲイを祝福したいと思います。もういちどセルゲイとメリアに拍手を。

(おわり)

出典:ダンスファン 2016年8月号付録DVD
●レクチャー翻訳/アフレコ:神元誠&久子

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【関連記事】 
#097 トネ・ナイハーゲンのレクチャー “THE POWER OF TWO”

 

ハッピー・ダンシング!

 

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