#140 昭和の本が紹介するブルース

 

#140 昭和の本が紹介するブルース

昭和8年と33年に発行された2冊の本が紹介するブルースを書き出してみました。面白いです。

「社交ダンス講座 第二巻実技編(一)/モダン・ブルースの項(玉置真吉氏担当) 」
(春陽堂/昭和8年(1933年)発行 定価貳圓 より)

モダン・ブルース (The Modern Blues)
創始者:ヴィクター・シルヴェスタ氏

        概   説

これはシャッセに基礎を置き、混んだホールでも気楽に踊れる。踊り易い一種の新ブルースである。スロー・フォックストロットは立派な踊手の為の踊であるが、混んだホールや狭い室では踊ることが出来ないという不便がある。それで、ブルース調の音楽に合せて狭い所、混んだ所でも踊れる踊りが必要になって来るのである。もっともスロー・フォックストロットとブルースは音楽的にも違っている。第一にブルースの方が大分音楽が緩い。第二に演奏上の態度が違う。ブルースは涙を流しながら駄洒落を言って笑っているような奏法であり、スロー・フォックストロットはあくまで生真面目な奏法で行く。第三に根本的に楽譜の書方が違っている。即ち、スロー・フォックストロットは流れるような、流暢な歌謡調で、アクセントは第一と第三拍にある。ブルースは、スタッカートでアクセントは四つの拍子みなにあるが、時として二と四にある。この第二拍と第四拍にアクセントのあることは、数年前のエール・ブルース(Yale Blues)を踊るに実に相応しい音楽である。

顧るに、ブルースも隨分変わったものである。原始ブルースから、フォックス・ブルース、それからエール・ブルース、そして今次に記そうとするのは「モダン・ブルース」である。

これは今までのブルースが総てに大きな室か、すいたホールを必要としたのであるが、今度のはシャッセを主とするもので、また、フィガーがみんな狭い場所で踊れるように仕組まれてあるから非常に重宝なのである。

 

*原文は下のPDFでお読みください。

 

 

 

 

「社交ダンスの踊り方」
(玉置真吉著/大泉書店/昭和33年(1958年)発行 定価弐百円)

ブルース (BLUES)

ブルースというものは、アメリカに奴隷として連れられて来た黒人が身の不幸をはかなんで歌った俗歌であったが、今日ではジャズ音楽の中に溶けこんでしまって、四十年前のものとは大分変った表現になっています。したがってブルースというダンスも、四十年前とはよほどちがってきていますが、ここでは音楽とともに変化した今日の踊り方を記します。

普通の四拍子の音楽というものは、第一拍と第三拍にアクセントのあるのが原則であります。

ところが、ブルースの音楽は、上の譜表に示しました通り、第二拍と第四拍にアクセントがあります。これは黒人達が生れ故郷のアフリカから持って来たリズムであり、黒人たちの感覚のなかには祖先以来、このような欧州人から見ると変則と聞こえるリズムが、ちゃんと伝っているのです。もっとも、このような一見不規則に聞こえるリズムはわが国にもあるのです。音楽の理論家にいわせると、日本の歌謡には、長唄も、常磐津心も、清元も、本来リズムも拍子もないのだといわれ、大家の採譜した楽譜を見ると、一応小節を区切って縦線は引いていますが、至ところ三拍子と二拍子が交錯して記されていますから、わが国の古い歌は何拍子だということができないのかも知れません。ことにわが国の芝居や相撲の客を呼びこむ櫓太鼓の「テテンガテンテン」という打ち方などは第二拍子にアクセントかあり、また近頃流行の「民謡温泉」「民謡酒場」などで毎日踊っている民踊の手拍子の「チョチョンカチョン」もやはり第二拍子にアクセントがあります。

とにかく、変則なリズムの打ち方というものは、黒人や日本人のような有色人種の特有のものかも知れません。

 

ここまで書いてきたとき、私はふと、欧州の古い舞踊曲のことが頭に浮んで来ました。私は自分の仕事の関係から欧州の古い音楽を調べているのですが、そのなかにはわが国の清元や長唄のように、三拍子、二拍子などの交錯したのがあり、ひどいのは五拍子なんぞも遠慮なくその中に厳存しているのもあります。そこで私は考えたのです。わが国に限らず、欧州でもどこでも、昔の田舎歌や、田舎踊りは、特別の作曲者なんぞいないから、拍子などを考えないで、ある器用な人間が、即興的に歌うなり、また原始的な楽器を弾じたりしたのに合せて、歌ったり、踊ったりしたのが今日まで残っているのではなかろうか。これらの多くはいつのまにか人々に忘れられたなかに、比較的人心に投じたものが、何千年か、何百年かの寿命を保ち続けてその地方に伝えられたものを、今日の音楽家が採譜すると、三拍子、二拍子、五拍子が雑然と並んだ曲になるのではなかろうか。

わが国には昔から支那風の記譜法、即ち、宮商角微羽(*注:「きゅうしょうかくちう」と読み、五音音階のこと)は雅楽にはありましたが、今日一般に行われている楽譜(白紙に横に五つの線を引いた楽譜)で音楽を記すようになったのは明治十二年(1879年)文部省に「音楽取調係」が設立されてからのことで、作曲、採譜などはそれからずっと遅れてできました。そして、古い歌や、三味線、琴などで耳から耳へ伝えられたものを五線譜に書き現わして見ると前に申したような不規則なものになります。

したがって、西洋でも、五線譜に楽譜を記しはじめるまでは、リズムなどもまちまちであったのですが、西洋では何百年も前から記譜法がしっかりして来たので、変則拍子の楽譜は近代にはあまり作られなかったのではないかと思われます。

大そう脱線しましたが、ブルースの音楽を理解する上にいくらか御参考になると思って、くどくどしく申しました。

ブルースは四拍子で一分間22-28小節くらいの非常にゆるい音楽、今日のダンス音楽のなかでは一番ゆっくりしています。まずレコードをかけて、1,2,3,4、と拍子をとるところから始めて下さい。

 

*原文は下のPDFでお読みください。

 

なんか、読んでいて楽しいです。

ハッピー・ダンシング!

 

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