#334 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その2.パートナーは二人いる!)

 

#334 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その2.パートナーは二人いる!)

 

ショッキングな体験

 

🔷背骨は頭の後ろについていなかった

アレクサンダー・テクニークに通い始めた頃、幾つかの驚ろく経験と発見をしました。そのひとつが、頭部に対する背骨の位置を知ったことでした。

骨格模型でその位置関係を見せて貰うと、背骨の先端は頭部の中央付近にありました(下図参照)。大まかには、背骨両耳の中間付近にありました。それまでの私は漠然とながらも、「背骨は首の後ろ側で後頭部とくっついている」イメージを持っていたので、「とても大きな勘違いをして生きて来た」ことに、とても驚いたことを覚えています! 

そして、この位置関係が分かるとダンスにおける頭部の使い方が変わります。

 

 

🔷投げられたボールを受け取らない?

目黒のボディ・チャンスに通い、個人レッスンを受け始めた当初の戸惑いのひとつに、ボール投げ遊びがありました。先生と3人で 部屋をぐるぐる回りながらボールを投げ渡すゲームです。

その日、最初に先生が妻に向けてボールを投げ、妻はボールを受け取りました。妻はそれを先生に投げ返す選択肢もありましたが、私に投げてきました。私は当然それを受け取りました。そして、それを先生に投げると・・・先生はスルーして受け取らなかったのです! 

唖然としている私たちに向かって先生が一言。

「受け取らないという選択肢もあります」

 

ガーン!

 

「なんじゃ、そりゃ。バカにしてるのか!」とまでは思いませんでしたが、

「そんなこと分かってるわい! 投げてくれたから、失礼にならないようキャッチしてるんじゃないか!」とって感じでした。

 

でも、そこがミソでした。この遊びで分かったことは、「筋肉の使い方も同じで、使わなくても良い筋肉を無意識のうちに使っている」という驚くべき事実でした。

 

例えば、私の場合パソコンに向かっているときの姿勢を見てもらうと、肩や肘に力が入っていると指摘されました。その力を抜くには、まず、肩のあたりを意識的に解放し力を抜こうとしなければなりません。力を入れてしまうのが習慣化されてしまっているからです。肩のあたりの筋肉を意識的に開放するのは、意識的にボールを受け取らないのと同じ作業なのでした。

 


これは当然ダンスに役立ちます。
例えばスタンダードでパートナーとホールドする時、男性は両手を広げてホールドの形を作り、女性は右手を男性の方に出す動作をします。あなたにもチェックしてもらいたいのですが、ホールドするときに肩も上げていないでしょうか? 「肩も」というより「肩を上げながら」手や腕を上げていませんか? もし、そうしていたら、ホールドをするのに、肩を上げる必要はあるでしょうか?

実験すると、ホールドするときは単に手や腕(肘)がホールドの位置に浮かび上がれば良いだけと分かります。そして「肩を上げる必要がない」ことが分かると、意識的にでも「肩を使わない」ようにすることができます。それまで無意識に使ってきた肩の筋肉が解放されると、それまでのホールドとは打って変わって、ナチュラルなホールドが誕生します。

 

 

🔷ダンスを知らない先生がアドバイスできるのか?

ある日、レッスンの中の実験として二人で踊ってみることにしました。その日は狭い部屋だったのでワルツをほんの数小節だけです。見てくださった先生は社交ダンスをまるで知りませんでしたが予備歩と 続く3歩を踊る間の私の意識の持ち方を質問してきました。

鋭い指摘にドギマギ答えた私に、次は、「頭蓋骨を持ち上げ、こんなことを考えて踊ってみては?」とヒントをくださいました。

 

社交ダンスをまったく知らないアレクサンダー・テクニークの先生のアドバイスは、ダンスの先生がするようなアドバイスとは全く違うものでしたが、その通りにやってみるとまるで違う踊りになったので。妻と二人、大変驚きました。しかも、別の機会に別の先生とでも同じことが起こりました。

そうした経験を何度か繰り返す中、

「アレクサンダー・テクニークの先生たちはあれだけ高度なアドバイスができるのだから、ここのトップのジェレミー・チャンスさんなら間違いなく日本のダンサーのために素晴らしいアドバイスができるに違いない」 ― と確信するようになりました。

3か月間の体験で確信を得た私は、後日、「ボディ・チャンス」主催者のジェレミー・チャンス氏とアポを取り、ダンサーのための記事を書いて欲しいとお願いしたのでした。

私たちはジェレミーさんの個人レッスンは受けていませんでしたし、習った先生に記事をお願いする選択肢はありましたが、敢えてジェレミーさんに依頼したのには理由がありました。私は、関わっていた隔月誌ダンスウイングをバイリンガルな雑誌にして世界に発信したいと思っていましたので、ジェレミーさんの英語の原稿と日本語の翻訳文を併記することを考えていたからです。

 

🔷ジェレミー・チャンス、WHO?

ここでジェレミー・チャンス氏について、私が知る彼の略歴です。

Jeremy Chance /ジェレミー・チャンス

BODY CHANCEプロコース、 トレーニング・ディレクター。アレクサンダー・テクニークを国内外で30年間指導。『ひとりでできるアレクサンダー・テクニーク』の著者。

1986年からはアレクサンダー・テクニークに関する国際誌『デイレクション』の編集も務める。オーストラリア・アレクサンダー・テクニーク協会(AUSTAT)創設メンバー。オーストラリアではシドニーのNIDA、俳優センター、俳優大学、ミュージッック・コンサーバトリアム、メルボルンのビクトリア大学の芸術学部で指導。1999年から現職。

 

 

 

ダンス ― 遥かに上手くなるための秘訣(第1回)

 

パートナーは二人必要?!

ジェレミーさんから届いた初回原稿には、いくつかのタイトル候補が書いてありました。私はその中から Secret Ingredients of Great Dancing Technique を選び、日本語タイトルとして「ダンス ― 遥かに上手くなるための秘訣」とすることに決めました。

その初回原稿には衝撃的な小見出しがついていました。

ダンスにはパートナーが二人必要です! 

今回はその部分を紹介しましょう。単なるキャッチ―な小見出しではなく、なるほど!と実感されることでしょう。

 

一人で踊っているとき、あなたにはパートナーがいます。また、あなたが社交ダンスを踊っているときパートナーは二人必要です。 一人ではありません。では、その「もう一人」は誰でしょう? 

二人目はもっと大切なのですが、以外と気づかれていません。それは、あなた「自身」です。心と体をひとつにして素晴らしい踊りをしようとする「あなた自身」のことです。

このあなた自身とのパートナーシップが、上手に踊れるかどうかを決定する一番重要なところで、ステップをどの位たくさん習うかということとは関係ありません。また、ダンスのクラスでは心と体の関係を習う時間もないでしょうから、どこか他で学ばなくてはなりません。

ダンスをしていて一番ストレスが溜まるのは、自分の体が思うように動かないことではありませんか? でも、驚かないでください。実は、あなたの体は、あなたが「そうしなさい」と指示している通りのことをしているに過ぎないのです。つまり、上手く行かないのは体に問題があるのではなく、あなたの体に対する指示の仕方に問題があるのです。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

自分と踊るパートナーは一人じゃないと知らされ、翻訳しながら非常に驚いている自分の中にとても納得している自分がいました。いつも自分と対話しながら踊っている自分を感じていたからです。それが 「もう一人のパートナー」 と認識できると、さらに違った対話ができそうな気がしますし、この考え方は、恋人同士でも夫婦でも、家族にも応用できると思いました。

 

「もう一人の自分」をどこに感じるか――当然、「自分の中」なのですが、少し形態を変えて遊んでみても面白いと思います。その一つの遊びとして、もう一人の自分を「肩車している」とイメージするとどうなるでしょう? 

「自分」が自由に踊るには「もう一人の自分」には勝手な動きをされては困ります。勝手に体を捻ったり傾けたり、あるいは、あちこち顔を動かされたりすると動きが邪魔されてしまうので、肩の上でなるべく静かにしていて欲しいと考えると思います。

この場合の「自分」を「下半身」に、肩車されている「もう一人の自分」を「上半身」に置き換えて踊ってみると、いままでより静かな踊りになることでしょう。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)

 

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