#335 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと(その3.動きの原理を知っていますか?)

 

#335 私とダンスとアレクサンダー・テクニークと
(その3.動きの原理を知っていますか?)

前回はジェレミーさんの第1回記事から「パートナーは二人いる!」を紹介しました。今回はその続きに進みましょう。

動きの原理を知っていますか?

ではここで、人間の体のすべての動きを司る原理についてですが、

 

  • 例えば、頭が脊椎の動きを支配していることを知っていますか?
  • 例えば、頭が脊椎の動きを支配していることを知っていますか?
  • 姿勢の問題は頑張るより頑張らない方が解決することを知っていますか?
  • 例えば、体は遺伝子学的に完璧な動きが出来るようになっているのを知っていますか?

もし、知らないものがありましたら、是非この先も読み進んでください。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

当時の私には「姿勢は頑張らない方が良い」というのは初耳だった気がします。しかし、その2年後、オリバーの「アービン・レガシー」を翻訳しているときに最低限の筋肉で立つという説明を見つけ、今では、それが真理以上の真理と確信するに至っています。「アービン・レガシー」(「ビル&ボビー・アービンのダンス・テクニック」)から、その部分を紹介しましょう。※ #276 アービンが遺したもの では、書籍化される前にダンスファンに連載された記事を掲載しています。

 

第1章 まっすぐ立ちましょう

 ダンステクニック

ダンスに関する限り、どんな事をするにおいても、私達は自分の体を可能な限り完璧な形にしておかなければなりません。それは、正確にはどういう事を意味しているのでしょう? 完璧な形とは、最小限の筋肉を使いつつ安定していられる垂直な形の事です。では、安定はどうやって得られるのでしょう? 正しいポスチャーの基本の形は骨格から得られます。背骨を少し伸ばすことで、背骨を支える筋肉の働きを向上させ、かつ、最小の動きにすることができます。背骨をできるだけ垂直にすることで、筋肉に余計な仕事をさせないで済みます。すると、訓練を受けている筋肉組織が自動的に体を支えようとする機能を引き継いでくれます。勿論、その時すでに使われている筋肉は使うことはできませんが。

 

良いダンスをしようと思ったなら、最低限の努力でポスチャーを作り、いつでも自分がしたい動きのために、必要な筋肉を自由に使えるようにしておくことが絶対条件となります。そうしておけば、多少バランスを崩しても自動的にバランスを取り直せるからです ― 体が、バランスを保つための(正確には、倒れないように!です)助けを求めると、脳は他の筋肉に助けるよう指示するからです。しかし、そうした事態が起こると、私達の動きは非常に制限されてしまいます。助けに出動させられる筋肉は、本来、回転やスウェイや方向転換、それから、ボディ・ライズする時に必要な体の中からの動きに使いたいのですから。

 

ジェレミーさんの記事の続きを読んでいきましょう。アレクサンダーがこの原理を発見した経緯が書かれています。

 

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー

1889年、オーストラリアのメルボルンに名の知れた俳優がおりました。彼は、仕事中に声が出なくなってしまったのですが、おかしなことに、日常の会話でその問題は起こりませんでした。

そこで、俳優の仕事が続けられるよう、医者や発声の先生など、頼りになりそうな人なら誰彼なしに尋ね歩いたのですが、思うような成果は得られず、遂に彼は、人に頼らず自分で解決しようと決心したのでした。そして考えたことは、ステージ上で声が出なくなるのは、自分が体に対して何かおかしなことをしているからではないかということでした。そこで、鏡を取り出し自分の姿を観察してみると、驚いたことに、舞台の上の姿は普段話すときとはまるで違う姿をしていることに気づいたのです。舞台では首を引いて押し下げ、胸を張り、背中を縮め、脚部に力を入れているのでした。

フレデリック・マサイアス・アレクサンダー(Frederick Matthias Alexander 1869-1955)という名のこの俳優は、10年にわたり3つの鏡を使いつつ何千時間も費やした結果、自分の体を司る幾つかの原理を発見しました。そこで、現在、世界的に認められているアレクサンダー・テクニークをつくることにしました。今日では36カ国以上の国々で数千人の先生が教えています。

1973年のことです。ノーベル医学賞を受賞したニコラス・ティンバーゲン(Nicholas Tinbergen)氏は、その授賞スピーチの中でアレクサンダーの発見について次のように語りました。

「医学的訓練を受けていない一人の男が示した洞察力、知性、そして、粘り強さの話は、医学研究、及び実施に関する最高の発見のひとつです」と。では、アレクサンダーが発見したものとは何だったのでしょう?

 

ボディ・チャンスの7つの原理

ここに私が分類した7つの原理があります。これを組み合わせることでもっとも簡単でもっとも複雑な人間の動きを理解することができます。これらは100年以上も前に発見されたことですが、それが最近の、特に神経科学の分野に於ける科学者達によって立証されているのです。あなたたちダンサーは特にそうした科学を知る必要はありませんが、体をコントロールするこのボディ・チャンスの原理を知っておくとよいでしょう。優れたダンサーは自然にそうしたことを理解しているのです。その原理とは――

  1. すべての動きは相互依存の関係にある。
  2. 有害な動きは概ね知らないうちに行われている。
  3. 動きは健康や精神状態に大きな影響を及ぼす。
  4. 頭部の動きは脊椎運動を支配する。
  5. 動きは古い感覚に支配されている。新しい考えで動くことはまれである。
  6. 動きは緊張を減らすことで変わる。増やしてではない。
  7. 私たちの運動感覚は体内で調整される。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

 

ジェレミーさんに記事を書いては貰ったものの、それまで簡単な英語にしか接してこなかった私には今まで目にしたことのない単語が山のように次々と飛び出してきて、あっという間に原稿の前で遭難しそうになりました。その一方で「仕事だからやらねば!」と、辞書とにらめっこしながら必死になると、案外頑張れる自分がそこにいることを発見しました(笑)。

振り返ると、この7つの原理の1と2の訳は、あまり上手くできていない気がします。原文を尊重して伝えようとするあまり、口が回らなくなっている感があります…。1番目は「あらゆる動きはどこかに影響を与えていること」で、2番目は「知らない間に、結構体に悪い動きをしている」ということですが、更に墓穴を掘らないうちに、その1番目を見て行きましょう。

それにしても、この7つは「原理」なので当然と言えば当然なのですが、より質の高いダンスを自分自身の中に見いだすには、繰り返し読み、じっくり考えるに値すると思います。

 

 

原理1.すべての動きは相互依存の関係にある

ダンスでは足や腕、あるいは体や頭などの特定の動かし方を考える必要がしばしば出てきます。それはダンスを習う上では当然で必要なことですが、そこには大きな危険も待ち受けています。もしあなたが、懸命に体の一部をどうにかしようとし過ぎ、しかも、それが体全体に及ぼす影響について何も考えずに行ったとしたら、知らないうちに体の他の部位にも変化を起こしてしまうことでしょう。

そうして気づかないうちに起こった変化は、時として、後々に問題を起こすことがあります(ボディ・チャンスの原理2)。例えばそれが、胸の締め付け感だったり、どこかにずきずきと痛みを感じたり、バランス感覚を失ったり、いつも変な方に曲がってしまったりと、知らない間にそうしたことが起こるのです。

このような場合、専門家に詳しい分析と原因究明をしてもらわなければなりませんが、概ね、原因は自分が想像もしないところにあるものです。しかし、動きの原理を理解し、その応用方法がわかると、動きにまつわる問題は速やかに解決されることでしょう。従って、体の動きの学習は、常に体全体の見地から行われなければなりません。

(「ダンス ―― 遥かに上手くなるための秘訣」第1回記事から)

 

原稿を訳しながら、「ブラジルで1匹の蝶が羽ばたけば、遠く離れた場所にも影響を与えている」とする「バタフライ効果」のことを連想しました。また、「クレオパトラの鼻が低かったら歴史は変わっていた」のような話もあります。そうした話から比べると遥かに規模の小さな自分の体のどこかを使うと、それが他の部位に影響を与えていても不思議ではありません。

そう考えると、例えば「腕を上げればホールドになる」と考えるのは短絡的であることが分かってきました。そして、ホールドするときは頭蓋骨や背骨のこと、あるいは、肩や脇周辺の筋肉のこと、さらには足裏にまで意識を広げると違ったものになることが分かってくるのでした。

 

📌BODY CHANCE – アレクサンダー・テクニーク

 

(つづく)

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