#356 ワルツの歴史/疑問/健康/アドバイス

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#356 ワルツの歴史/疑問/健康/アドバイス

「ダンスはワルツに始まりワルツに終わる」と言われる位、ワルツの人気は不動です。「それは初心者だからさ。少し踊れるようになると好みが変わるよ」 ― そんな声も聞こえてきそうですが、直接世界のトップ・ダンサー達に質問したところ、「ワルツが一番好き」という人が沢山いました。どうやらワルツの人気は本物のようです。

そこで、調べて来た資料の幾つかをここにまとめて紹介します。

 

 

音楽:緩やかな3/4 拍子で1分間に30小節くらいのテンポで演奏されます。
基本のリズム:123 123 で1にアクセントが置かれています。
ステップ:一般的には1小節で3歩踏みます。3歩構成と6歩構成のステップがあります。

 

    イメージ:Alex Moore Online Museumより

 

📚歴史

ワルツの魅力はどこにあるのでしょう? ワルツの歴史を少しだけ紐解いて、その答えがないか探ってみましょう。ここではアメリカのダンス商品を扱うサイト ”Central home.com” に出てい歴史を分りやすく訳してみました。翻訳は2006年時のものです。

余談ですが、アメリカにもイギリスにも単にダンス関連商品を売るのではなく、歴史にまで踏み込んだサイトを構築しているところが多いのは流石だと思います。外人コーチャーの中には、レクチャーの途中でダンスの歴史や古い人物の事を突然「知ってる?」と質問してくる人もいるので、こうした情報があるのは有難いです。

 

 

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・踊るカラフルなドレス!
・回る燕尾服!
・結婚式!
・美しい音楽!
・強いメロディー!
・生き生きとした動き!

 

ワルツはウィーン郊外、そしてオーストリアのアルプス地域で誕生しました。17世紀にはハプスブルク宮廷の舞踏室でワルツが演奏されていますが、それ以前にも、オーストリアやドイツの小作農たちにより、回るダンスとして踊られました。皆さんにおなじみのワルツ曲の多くも、身分の低かった農夫たちが歌っていたヨーデルの単純なメロディーに遡る事ができます。

18世紀半ば、ワルツの一つの形のアレマンド(allemande)という踊りが大変人気になりました。アレマンドは、もともとコントラダンス(contredanse)という踊りの中のフィガーで、肩の高さで腕を取り合って踊りましたが、それが独立してクロース・ホールドで踊るようになったのです。その古い農民のダンスが18世紀終わりまでには上流社会で受け入れられるようになり、今日に至っています。

 

このように大変人気のあるワルツでしたが、反対者がいなかった訳ではありません。18世紀当時のダンス教師たちはワルツを脅威に思いました。なぜなら、彼らが教える宮廷ダンス(メヌエットなど)では、たくさんの複雑なステップと様々なポーズを習得するのにかなりの練習を必要としたのに対し、ワルツの基本ステップは短時間で覚えることができたからです。

そこで教師達は、ワルツでは、男女が宮廷の踊りより密着している点や、回転が激しいことを取り上げ、モラル上の問題があると非難したのです。宗教の上層部はワルツを下品で、罪深い踊りであるとみなしました。このようにして、ヨーロッパの宮廷舞踏界はワルツを頑固に拒否し続け、イギリス(厳格なモラルの地)では、ワルツが受け入れられるまでには長い時間を要しました。

 

1816年7月、リージェント王子(Prince Regent)によって開催された舞踏会にはワルツが加えられましたが、タイムズ紙(The Times)の社説は次のように非難しています。

「先週金曜日、宮廷舞踏会で(初めてと信じますが)紹介されたワルツという外国から来た淫らな踊りを不快な思いで目にした・・・体を親密に寄せ合い、手足をなまめかしく絡め合うこの踊りは、イギリス女性の美徳とされる慎みとは程遠いものだ。この低俗な踊りが売春婦や姦婦に限られるなら問題視することもないが、それが、まともな階級にまで押し付けられようとしている今、その命取りとなる感染から自分達の娘を遠ざけるよう総ての親に注意を促すことが、我々の義務であろう」

(ロンドン、1816年7月16日付タイムズ紙)

 

1866年になってさえ、イギリスの雑誌ベルグレービア(Belgravia)にはこう書かれています。

「夜な夜な出かけ、そこに音楽があることが唯一の救いとしても、知らない男に激しく抱かれて狭い部屋の中を動き回る娘や妻を見て、なんら不安を覚えない者がいるなら、彼らはこの不道徳なダンスの恐ろしさに気づいていないのだ」

 

このように、大きな非難の声が年配の世代から上がったものの、当時の統治者だったビクトリア女王(Queen Victoria 在位1837-1901)が熱心なボールルーム・ダンスのエキスパートで、特にワルツを愛していたことが言及されることは、ほとんどありませんでした!

しかし、歴史というものは繰り返すもので、年配者の反目は、かえってワルツの人気を増大させる結果となりました。フランス革命の直後から、中産階級の人々は熱狂的にワルツを踊るようになり、パリだけで約700のダンスホールがあったくらいです! 

1804年にパリを訪れたドイツの旅行者は、次のように述べました ― 「このドイツのダンスを変形させたワルツに対する人々の情熱ときたら、タバコと同じ、戦後の下品な流行のひとつだ」と。

アメリカで最初にワルツが踊られたのは、1834年、ボストン市でのことで、ダンス教師のロレンゾ・パパティノ氏(Lorenzo Papatino))がオティス・ビーコン・ヒル夫人(Mrs. Otis Beacon Hill)の大邸宅で披露したのが最初と伝えられています。社会的指導者たちは、いわゆる「下品な踊り」の紹介に仰天してしまいましたが、ワルツは19世紀半ば頃までには、アメリカの中で確固たる足場を築くのでした。

 

音楽はダンスの中で重要な役割を果たし、すべてのダンスには適切な音楽が不可欠ですが、1830年頃になると、ワルツは2人の偉大なオーストリア人作曲家、フランツ・ランナー(Franz Lanner)とヨハン・シュトラウス(Johann Strauss)による凄まじい後押しを得ました。19世紀の間中、人気が絶えなかった二人の作曲家はヴィニーズ・ワルツを確立したのです。そして、1900年までに、典型的なダンス行事の中の3/4はワルツが占め、残り1/4がその他の踊りという風になっていました。

 

19世紀の終わりになると、ワルツに二つの変化がもたらされました。一つはボストン(Bostonワルツ)で、以前よりゆっくりと大きく滑るようにステップするようになっていました。このボストンは第1次大戦と共に消え去りましたが、今日の英国スタイル、つまりインターナショナル・スタイルが生まれるきっかけとなりました。二つ目は、今日のワルツでも広く使われているヘジテイションが使われるようになったことです。

幸い、過激な反対意見は次第に勢力を失い、ワルツは嵐のような試練を耐え抜いて今日、私達が知る二つの形となったのです。ひとつはヴィニーズ・ワルツ、そして、もうひとつはスロー・ワルツです。
(参考:http://www.centralhome.com 2006年時点)

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今日、私達が何気なく踊っているワルツにもこのような歴史があったわけですが、私たち夫婦がダンスを始めた1970年代でも、社交ダンスをいかがわしい目で見る人が周囲に沢山いました。それより更に100年も前の事ですから、上に書かれた人々の反応は決して大袈裟ではなかったと思います。それにも拘らずワルツが生き残り発展してきたということは、それだけ人々を惹きつける大きな魅力を秘めていたからに違いありません。

 

 

 

❓3つの疑問 

多くの人から良く聞かれる疑問・質問を取り上げてみましょう。

1.どうして競技会はワルツから始まるの?
社交ダンスをしている人なら、一度や二度は競技会に出向いたり、競技会の模様をTVやビデオで観た事があるでしょうが、確かにボールルームは、いつもワルツから始まります。正しい理由は分りませんが、ボールルーム・ダンスの歴史の中で、ワルツが一番早くに踊られるようになったからではないかと勝手に想像しています。

 

2.スロー・ワルツって何?
ワルツにはテンポの速いヴィニーズ(ウィンナー)・ワルツもありますので、それと区別する意味で、ワルツはスロー・ワルツと呼ばれることがあります。

 

3.どうして3歩目で足を閉じるの?
確かにそうですね。ナチュラル・ターンの3歩目や6歩目で足が揃わないと、「足を閉じて!」と先生に注意されたりしますし、閉じるべき所で足が離れている人を見ると、「あれ? それって正しい踊り方?」って思うこともありますね。

歴史のところでも見ましたが、ワルツの前身はボストン(ボストン・ワルツ)と呼ばれる踊りで、それが英国に伝わり人気が出たのは1922年以後のことです。第1次世界大戦直後にワルツの形態が大きく変わり、1921年、ベーシック・ムーブメントは「ステップ、ステップ、閉じる」と決められています。そのように決められた背景には、

・前身のボストンでも要所々々で足を閉じていた。
・足を閉じることで高低差のあるライズ・アンド・フォールが作り出される。
・優雅な回転に結びつく。

などの理由が推察されます。いずれにしても、足を閉じることでワルツらしさが表現されていると思います。

 

 

 

🏃🏻‍♀️健康

「運動のために、ワルツだけでも踊れるようになりたい!」という声を聞いたことがありますが、素晴らしい運動になる事は保証します! そこで、ウォーキングと比較してみましょう。

ウォーキングでは1分間に100歩のペースで歩くと約3.3kcal消費されるといわれています。ダンスではどうでしょう? ワルツの音楽は1分間に30小節くらいのテンポで演奏されます。つまり1分間に90拍ですから90歩。シャッセもするでしょうから1分間に100歩はステップします。この時点で最低ウォーキング同様の効果が得られています。

その上に、スイングして、スウェイして、ライズでつま先に立ち、ロアで膝を使いますから、踊りながら体操をしているようなものです。ボディの使い方次第では、消費カロリーはウォーキングの2倍にも3倍にもなるでしょう。

1曲の長さを単純に3分と考えると、3分のウォーキングで汗をかく事は少ないでしょうが、ワルツを1曲踊ると体が汗ばんできます。このことからもダンスの運動量の大きさが分かります。ワルツといわず、どんどん色々なダンスを踊ることをおすすめします。ダンスは運動にもなりますが、若さを保つ効果もあると思いませんか?

余談ですが、ダンスの歩数を万歩計で調べようとして失敗に終わりました。バタバタとステップしないダンスでは、実際の歩数より遥かに少ない数値しか万歩計に表れなかったのです。少ないほど静かに踊れている証拠かも知れませんね!

 

 

 

㊙初心者へのアドバイス

「上達に王道はない」の言葉があるように王道はないかも知れませんが、ちょっとした、でも確実な上達への近道を紹介しましょう。

 

その1⃣ 3が大事!
ワルツの音楽は、ズン・チャッチャッと1拍目に強いアクセントがありますので、多くの人は強いアクセントのある“1”で大きく踊ろうとします。あながち間違いではありませんが、前進する人は「突っ込み」、後退する人は「倒れる」危険性をはらんでいます。その“1”で大きく踊るには、その前の“3”を丁寧に処理する必要があります。ワルツの心得として、まず「カウントの3が一番大事!」と覚えてください。

 

その2⃣ ワルツの波は優しくない!
ワルツの音楽から大海原の穏やかな「波」を連想し、その波のように踊ろうとすると、とんでもない間違いを起してしまいます!

一般に、ライズしていく場合は、一度開いた足の上に上がっていくので距離がありますから、緩やかな波のイメージでよいのですが、ロアする時は、まずはその足の上でロアしなくてはなりませんの。意外と急直下のイメージなのです。

 

その3⃣ 1の前進はヒールから!
ワルツのカウント1の前進では「ヒール」から出ましょう。厳密なフットワークは「HT」ですが、まずは、ヒールから出られるようにしましょう。そこが処理できると「上手!」と思われることでしょう。

1歩目の前進をヒールから出るにはちょっとしたコツがあります - その前の3の足の上でロアしていることです。このロアができていると、次の1の足はとても自由な状態にあるので自然にヒールから出ることができます。

ヒールから出ていない人をたくさん見かけますが、そこから美しいムーブメントは生まれません。

 

その4⃣ 内回りと外回りは踊り方が違う!
「足型どおりに踊っているし、ホールドもきちんとやっているつもりだけれど、なぜか回転する度にパートナーとずれてしまう」と不思議に思ったことはありませんか? 初心者に良く見るこの過ちは、回転には内回りの人と外回りの人がいる事を理解せず、いつも同じように動いてしまうのが原因なのです。

二人が組んで回転を起す場合、つねに回転の内側になる人と外側になる人がいます。簡単に言うと、後退する人はいつも「内回り(回転の内側)」で前進する人はいつも「外回り(回転の外側)」になります。パートナーと腕を伸ばし離れて組んでナチュラル・ターンの1~3を踊ってみると、女性は問題なく踊れるのに、男性は行くべきところまで行かれないのが分かります。このことから外側の人の移動量の方が大きいことが分かります。前進する人(回転の外側)は常に積極的に動いていきましょう。そして、後退(回転の内側)になったときは、前進の人に合わせるように控えめに動きましょう。しかも、ほんの少し遅れ気味に。

 

まずはこの4つからトライしてみてください。必ず今までよりグンと上手に踊れるようになることでしょう。そして、あなたは益々ワルツの魅力に惹きこまれていくことでしょう。

 

相手の動きに気遣いながら踊る時、ワルツの音楽はお母さんのお腹の中で聞いた心臓音のように優しく、心地よく感じられるのではないでしょうか。

 

ハッピー・ダンシング!

 

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