#444 「サークルで上手くなっちゃって、ごめんなさい!」連載9ワルツ3

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「おしゃべり」「フィガーの説明とヒント」「質問コーナー」と盛りだくさんの話題を通し、個人レッスンに行かれない人やパートナーがいない人でも上手くなれる近道をこっそり教えちゃいます。月刊誌ダンスファン連載記事(2015~2017年、全35回)の復刻版(加筆、修正あり)。

 

#444 「サークルで上手くなっちゃって、ごめんなさい!」連載9
ワルツ3 少し複雑になってきたフィガー

 

 

 

ワルツが上手くなっちゃって、ごめんなさい!

皆さん、こんにちは! 暑くなってきましたね。こまめに水分補給をして熱中症にかからないよう気をつけましょう。ダンスの熱中症は大歓迎ですけどね(笑)。

これまで、アマルガメーション1として2種類のクローズド・チェンジとナチュラル・ターン、そしてリバース・ターンの合計18歩を学びました。

 

今回からアマルガメーション2(図)に入り、ウィスク、シャッセ・フロム・PP、そしてナチュラル・スピン・ターンの3種類のフィガーを使って同じLOD上を更に進んでから、新LODに向きを変えるようにします。さっそくお喋りを交えながら、レッスンを開始しましょう。

 

 

【その9】少し複雑になってきたフィガー

今まで出てきたフィガーは、「ステップ→ 開く→ 閉じる」のパターンでしたが、今回は、足が後ろにかかるウィスクと、3拍の中で4歩ステップするシャッセ・フロム・PPという、より複雑で高度なフィガーを勉強しましょう。

 

 

ウィスク(Whisk)

アマルガメーション2の右端にある17~18歩は前回のリバース・ターンを終えたところです。その足(男性右足、女性左足)にしっかりロアーしてから、今回のウィスクに入りましょう。フットワークは各ステップの説明の最後に表示しました。

ウィスクをホイスクと書くこともありますが、英語の発音をどう扱うかというだけの問題なので、間違ではありません。柔軟に対応しましょう。

 

 【男 性】

壁斜めに面して始め、同じ向きで終わります。

①左足、前進。(HT)

②右足を横少し前に振り出し、ライズして行きます。(T)。

③女性をPPにリードしながら右足の後ろに左足をクロス。ロアーします。(TH)。

 

 【女 性】

壁斜めに背面して始め、中央斜めに面して終わります。

①右足、後退。(TH)

②斜め後ろに左足トウを着きます。(T)

③左足の上で右回転をしながら、右足を後ろにクロス。PPになりロアーします。(TH)

 

 

ウィスクの雑学

英語(whisk)は料理に使う「泡立て器」の意味があり、泡を立てるときのように「ササッ」とした動きも表わします。しかし、どうやらそれがこのフィガー名の由来ではなさそうです。

ところで、ウィスクはなんとなく「クローズド・チェンジ」に似ている気がしませんか? そして、8月号で「(クローズド・チェンジは)経験者にもバランス・コントロールが難しい、なかなかの曲者」と、お話ししましたが、実は、このフィガー名の命名者はアレックス・ムーア氏のようなのです。

ムーア氏と言えば「ムーア杯」とか「リバイズド・テクニック」の著者として広く知られていますね。その彼がその昔、クローズド・チェンジを踊ろうとしてバランスを崩し、とっさに足を後ろにかけてバランスを保ってできたのがこのウィスクと言われています。

こうした楽しい雑学は、ダンス人生を豊かにしてくれる気がして私は大好きですが、あなたは、いかがですか?

 

 

 

ウィスクで一番多い質問

ウィスクで受ける一番多い質問は、男性からは「どうやって女性をPPにするか」で、女性からは「PPになるタイミングはいつか」です。そこで、少しPPに関するお話をしましょう。

 

 

男性はいつリードする?

男性がPPのリードを始めるタイミングは2歩目トウに乗りきるところからです。その上で左腿を引き寄せながら、左サイドが一旦、右足トウより少し前に行く感じを持つと、ボディが僅かに右回転を起こすので、それが女性に対するウィスクのリードになります。

それから右足後ろに左足をクロスすると考えてみましょう。でも、左足をクロスしながらロアーをしてしまうと、PPの形が崩れてしまいますから、一度両足トウにしっかり立つ瞬間を感じるようにします。

ライズ&フォール図の「サ・ン」の高台の部分がそれを示しています。

 

 

女性はPPになりたく…ない?

女性は全身を耳にして、男性のボディから伝わるリードのメッセージをキャッチしようとします。これはとても繊細な仕事です。その上で、女性は「できるだけPPになりたくない」と思いましょう。

 

こう書くと、(男性も含めて)たくさんの人から「なんで!」と反発する声が聞こえてきそうですが、これこそが、私たちが考える美しいPPになる秘訣です。なぜか?

実は、女性の中にはリードを感じると素早くPPになってしまおうとする人や、リードのあるなしに関係なく、勝負師のように山感を張り、ステップとして覚えた場所でさっさとPPになりたがる人を多く見受けます。

 

しかし、実験してみるとよく分かりますが、PPになろうとするのが早ければ早いほど、男性の左サイドの方に近寄ってしまいます。これでは美しいPPとは言えません。美しい形は、男性の右腕の深いところにあるときだからです。

ですから、女性は「PPになりたくない、なりたくない」と呪文のように唱えながら、男性からのリードが伝わってきたら、その最後の最後で「仕方がないからPPになってあげるわ」位の気持ちで(でも、嫌そうな顔はしないで)ネックだけ返すと、周りで見ている人もビックリするほどの美しいPPが出来上がります!

「早くPPになろう」と、「PPになりたくない、なりたくない」の二つを、サークルで実験してみましょう。

 

 

 

 

シャッセ・フロム・PP(Chasse from Promenade Position)

PPから始めるシャッセの意味です。ウィスクでPPになったところから続ける最もポピュラーなフィガーです。〈1・2・と・3〉と4歩ステップします。

ライズ&フォールはウィスクと同じ。「ニ・イ」を「ニ・ト」と読んでください。

 

 

 【男 性】

壁斜めに面して始め、同じ向きで終わります。

①PPでLODに沿って右足前進。(HT)

②左足を横少し前にステップ。(1/2拍)(T)

③右足を引き寄せ体重を移します。(1/2拍)(T)

④左足を横少し前へステップ。女性の右外側に出る用意をします。(TH)

 

 

 【女 性】

中央斜めに面して始め、壁斜めに背面して終わります。

①LODに沿って左足前進。左回転を始めます。(HT)

②右足を横にステップ。いま、背中は壁に向いています。(1/2拍)(T)

③左足を引き寄せ体重を移します。いま、ほぼ壁斜めに背面しています。(1/2拍)(T)

④右足を横少し後ろにステップ。男性が右外側に出られるようにします。(TH)

 

 

 

 

 

遠くに行くには下に行く?

カウントの3はジェットコースターのように、との話をしましたが、落下しているかのように見えるジェットコースターも、じつは緻密にスピード・コントロールされているようです。

ワルツの3も真下に、しかも、丁寧に沈む感じです。

 

3の足の上でロアーしながら次の足を前方、あるいは後方へ出す用意をしましょう。体重はまだ3の足の上です。

この方法のスゴイところは、3で下へのロアーを心掛けると安定して距離が延びることです。試しに二人で協力し、頑張って、バランスも考えず、どれだけ遠くまで行けるか、好きなフィガーを使って踊ってみてください。

 

次に、同じフィガーを二人で協力し、頑張らず、3で真下にロアーすることを大切にして踊ってみましょう。「さっきの頑張りは、なんだったの?」と思うような結果が待っていることでしょう。

 

 

 

 

上手にこなすには1歩目を必ずヒールから出て行きます。

骨盤が床に対して垂直であるようにし、

股関節を緩めるように意識します。

(「熱心なダンサーに贈る読むダンス用語集」シャッセ・フロム・PPの項より抜粋)

 

 

 

シャッセ・フロム・PPで目立つ間違い三つ

①1歩目で大きく出ようとすること。
②1歩目をボールで出る。
③3歩目をステップしながらロアーを始める。

 

 

その対処法は?

  1. 二人の形の関係上、PPからの1歩目は大きく出られません。そこを頑張ると、体が開きすぎてしまいます。よって、ウィスクでロアーしたところから軽くステップできるところに出て行きましょう。
  2. 1歩目をボールで出る人がわんさかいますが、ブルースでもお話ししたように、ボールで出ると前進運動が妨げられます。シャッセで距離を稼ぎたい人は、ヒールから出て乗り越して行くことに専念しましょう。特に女性は次のステップを目指さず、この1歩をヒールからトウの方へ乗り越して行くようにすると、自然な左回転が起き、男性とスクエアに戻りやすくなります。

  3. 3歩目の男性右足・女性左足(&カウント)はトウです。トウの足では、次の足に体重が移動するまで、ヒールを下そうとしたり、膝を緩めようとしたりしません。それをしてしまうと、男性は4歩目をヒールから出る、更なる間違いを起こします。ここはじっくり、フットワークを確認しながら練習するのが得策です。

 

 

エピソードをひとつ

以前、マーカス・ヒルトンのレクチャーDVDを見ていると、ビル&ボビー・アービンについて、このような話がありました―― 

随分昔のことですが、二人がブラックプールで行ったショーは完全な失敗に終わりました。怒り狂った二人は控室で靴を投げ合って喧嘩をしたほどです。

 

それから10時間かけてロンドンまで車を飛ばし、いつものスターライト・ボールルームに駆けつけました。ブラックプールと同じように、PP ~ シャッセ・フロム・PP ~ ナチュラル・スピン・ターンで、できるだけ遠くまで行こうと足を大きく出して踊りました。

 

初めと終わりの場所にマークをつけ、次にビルは目を閉じました。今度は遠くまで行こうとせず、きちんとロアーをし、ボディを集めながら踊ることに集中すると、なんと、先ほどより1mも遠くまで到達したのです」――。

 

実は、前ページのコラムはこの話がきっかけになっています。

 

 

 

 

 

もっと詳しく!(Q&A)

(※読者専用フロアでお答えしたことを、もう少し詳しく説明するコーナーです。)

 

質問:
アレマーナのときはどこに重心を置きますか? スリー・アレマーナを綺麗に決めたいです。(千葉県 女性)

 

回答:
アレマーナに限らず、重心は常に軸足の上に感じるボディの中心にあります。重心は軸足が次の足に丁寧に運びます。重心の移動が完了するのは、次の足に体重が乗り、その次のステップの用意ができたときと考えましょう。片足が後ろにある間は、新しい軸足の動きは制限されているからです。

 

アレマーナでもスリー・アレマーナでも、女性のすることは「前進してから回転」と考えましょう。私たちのサークル活動で、とても効果的だったアレマーナのアドバイスを紹介しましょう。

①ウォークしてヒップを乗せたときの足を見て、もし、内股になっていたら回転が足りない証拠です。次に出る足に対して外股になるまで、軸足を回転させましょう。

②軸足の回転をするや否や、目と鼻を次の進行方向に向けます。おへそは向けなくて良いです。つまり、顔が次の方に向いていれば、体の回転量は少なめで構わないのです。おへそを向けようとすると、体がオーバーターンしてバランスを崩します。

③右手を上げるとき、手首だけが男性の手について上がると思いましょう。肘は手首が上がると自然に上がりますから脱力しておきます。これを肘で手を上げると、肘に入っている力が体の回転の邪魔をするからです。手は体の回転を邪魔しないように使いましょう。

 

ハッピー・ダンシング!

 

(ダンスファン2015年10月号。連載9ワルツ3おわり)

 

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