#446 「サークルで上手くなっちゃって、ごめんなさい!」連載11ワルツ5

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「おしゃべり」「フィガーの説明とヒント」「質問コーナー」と盛りだくさんの話題を通し、個人レッスンに行かれない人やパートナーがいない人でも上手くなれる近道をこっそり教えちゃいます。月刊誌ダンスファン連載記事(2015~2017年、全35回)の復刻版(加筆、修正あり)。

 

#446 「サークルで上手くなっちゃって、ごめんなさい!」連載11
ワルツ5 
躍動感を生み出す応用編!

 

 

 

ワルツが上手くなっちゃって、ごめんなさい!

 

皆さん、こんにちは! この原稿を書いている9月には、東北地方が豪雨に見舞われました。「線状降水帯」が原因ということですが、常総市の洪水規模の大きさに驚きました。被災された方々が一刻も早く元の生活に戻れることを祈るばかりです。

さて、今月のステップです。前回のナチュラル・スピン・ターンで一つのLODを終えました。今回から第2LODに入り、新しく4つのフィガーを勉強しましょう。最初はホバー・トゥ・PPです。

 

 

 

会話が感じられ躍動感を生み出す応用編!

 

 

 

ホバー・トゥ・PP(Hover to PP)

 

ウィスクからウィーブ・フロム・PPに入る形で習う人が多いと思いますが、ウィスクは既に勉強しましたので、ここではホバー・トゥ・PPに置き換えてみました。これは「ホバーしてからPPになる」の意味で、スローにあるホバー・テレマークというフィガーをPPで終わらせたものです。踊り方はとても簡単です。1歩目も2歩目も壁斜めに動いて行き、3歩目での高さを保ちながらPPになって横にステップします。

下の足型図はホバーからウィーブ・フロム・PPに続けています。

 

 

 【男 性】

壁斜めに面して始め、中央方向に終ります。

①左足前進。(HT)
②右足前進。(T)
③男性がPPになり左足を中央方向にステップ。トウは中央斜めに向けます。(TH)

 

 

 【女 性】

壁斜めに背面して始め、中央方向に終ります。

①右足後退。(TH)
②左足後退。(T)
③PPになり右足を中央方向にステップ。トウは逆中央斜めに向けます。(TH)

 

 

⬛ホバー・トゥ・PPでは男性がPPに

3歩目で男性は女性をPPにするのではなく、自分が少し開くつもりでPPになりましょう。そうすると、次を「中央方向」に進んでいけるので、続くウィーブ・フロム・PPがとても楽に踊れます。

3歩目で女性をPPにすると「中央斜め方向」に終るようになります。それは決して間違いではありませんが、後続がウィーブ・フロム・PPの場合、後半の踊り方がとても難しくなります。この話は次号でもしますが、今回はできる限り「中央」を意識して練習をしてみてください。

 

 

 

⬛ライズ&フォールの注意点

1の終わりでライズを始めたなら、2の終わりまでライズし続けて最高点に達します。3では、その高さをキープしたまま両足トウで床を捉えましょう。それから3の足に体重が完全移動してロアーが始まります。正直(?)に3の足にすぐロアーすると「へにゃ~」っと崩れる動きになってしまいます。

 

 

 

⬛ノー・フット・ライズに注意しましょう。

足型図の★印はノー・フット・ライズの場所。ここではフットワークに忠実にトウからステップしたなら、素直に体重がヒールを抜け、2歩目に移動させましょう。

 

 

⬛ホバーじゃなくウィスクを使う場合は?

ウィスクをシャッセ・フロム・PPにつなげる場合、ウィスクの2歩目は横への動きになりますが、ウィーブ・フロム・PPにつなげる場合の2歩目は、今回のホバー・トゥ・PPと同じ動きになります。ライズ&フォールも同じですし、女性のノー・フット・ライズも同じです。このように、同じフィガーでも後続フィガーで踊り方に違いが出るので気をつけましょう。

 

 

⬛ホバーを覚えたら何が変わる?

さて、ホバー・トゥ・PPを覚えると、単に新しいフィガーを覚える以上のメリットがあります。

たとえば、男性が「ウィスク」しか知らないと女性は安心しきって、さっさとウィスクに入り、さっさと3歩目でロアーしても次のフィガーに入れます。それだと申し合わせで動いているのと同じなので、動く楽しさはあっても、二人で「踊りを創る」面白さに欠けます。

しかし、男性に選択肢ができると、女性は用心するようになります。3歩目を後ろにクロスするか、それとも開くかではまったく違いますからね。

そうなると、男性はリードの違いを明確にしなければなりませんし、女性は男性のリードを注意して聞こうとしなければなりません。すると、女性の動きに深みが現れ、結果、カップルとしての踊りも深みを増すことになります。

 

 

 

フィガーの応用編でドキドキ・ワクワク感倍増!

 

いつも同じパターンで踊るのは安心感がありますが、倦怠期に入った夫婦のようにドキドキすることもありません。男性が「こんな踊り方をしてみよう」と思ったり、女性が「次は何が来るのかしら」とワクワクして待っていたりしたら、それだけで、既にダンスの中に会話が生れています。二人の会話が感じられる踊りは、魅力的ですし、それ自体がレベルアップした踊りと言うことができます。

 

そこで、ウィスクとホバー・トゥ・PPの二つを使って変化のつけかたを紹介しましょう。これでドキドキ・ワクワク感を倍増させましょう!

①もっとも簡単な方法は、2小節使ってホバー・トゥ・PPを踊る方法です。ホバーしている間は揺らぎを感じていましょう。

②ウィスクの3歩を踊りますが、3歩目でロアーしないで、次の1拍までトウに高くいます(123・1)。そこから男性は右足後退(女性、左足後退)し(2)、一度スクエアに戻ってから、改めてホバー・トゥ・PPの3歩目に入ります(3)。

③ウィスクの3歩を踊りますが、3歩目でロアーしないでトウのままいます(123)。高いまま、その場で男性は右(女性は左)スウェイをかけ(1)、(2)でゆっくり体重とシェイプを戻し、(3)でホバー・トゥ・PPの3歩目に入ります。

④ウィスクの3歩目でロアーしないで、次の1拍までトウに高くいます(123・1)。続いて、ウィスクの2~3を踊ります(23)。

 

 

 

 

★真っすぐ立つのも、ライズをするのも「頭から」――の話

 

さて、ワルツの踊りの大きな特徴に、

①ライズ&フォール、
②ローテーション、
③スウェイ

の3つがあります。そこで今回は、次のフィガーに入る前に、ライズの話を少しましょう。

 

以前、私たちは中目黒にあるボディ・チャンスに通いアレクサンダー・テクニークを習いました。そこで学習したひとつに「頭の動きは背骨を支配する」があります。

 

動物はみな、頭が体を連れて行くという説明を受けた後、一つの実験をさせられました。私が四つ這いで部屋の中を動き回っているときに、妻が私の頭を軽く触って行き先を操作するのです。

するとどうでしょう。私は妻の意のままの方向に動いてしまいました。

 

この実験で、私たちは頭を操作すれば体が容易について行くことを納得しました。確かにそうなのです。たとえば、親が「危ないからそっちに行くんじゃない!」と子供の手を引いても、嫌がる子供は上手に頭を使ってそれに逆らいます。でも、親が子供の頭に手をかけて引くと、簡単に自分の方に引き寄せることができます。

 

ダンスに話を戻しましょう。ダンスでは真っすぐ立つことが(勿論、骨格的には無理です)求められますが、それをブロックと紐を使って考えてみましょう。

 

ここに4つのブロックと1本の紐があります。4つのブロックを真っすぐ積み重ねるのと、紐を真っすぐ垂らすのでは、どちらが簡単ですか? (絵が下手ですが、レッスン中に白板に描いていると思ってお許しを!)

 

 

 

答えは聞くまでもありません。

ブロックを重ねる場合、前後左右のずれを確かめながら作業しなければなりませんから、慎重さが求められ、時間もかかります。もし、一つがずれると、次のブロックは逆の方にずらさなければ崩れる危険性が出てきます。しかも、その時点で4つのブロックはまっすぐではなくなっています。

 

ダンスでも同じで、両脚部から始まり腰 → 胴体 → 頭の順に真っすぐしたつもりなのに、先生から「真っすぐ立って」とか「曲がっている」と注意を受けることになります。これには、自分で気づかないどこかで、ずれが生じているからです。

 

紐の場合は別です。紐の片端を持ち上げれば、するするっとまっすぐな紐ができあがるのですから。この持ち上げられた紐のように、自分の頭を持ち上げ、その下に胴体 → 腰 → 両脚部がぶら下がるイメージを持つと、楽にまっすぐな姿勢を作ることができます。

難点は誰かがつまんで持ち上げてくれるのではなく、自分でやらなければなりません。でも、頭を頭だけで持ち上げることはできません。

 

では、どうするか? 上にあげようとする頭を、その下にある首から足先に至るまでのあらゆる部位の筋肉にサポートしてもらう必要があります。

一部の筋肉(例えば首とか胸)だけに頼ると歪みを生じますし、どこか一カ所でも休んでいると、それも歪みを起こします。

 

コツは、最初に「頭が浮いて行く」とイメージします。

次に、そのイメージを実現するために、あらゆる筋肉に最小限の協力をお願いし、体全体でも、やはり、最小限の力で立とうとすることです。そうすると、力まず、バランスのよい姿勢ができあがります。

 

ライズの場合も同じで、頭が体全体に向けて「ライズするよ」とメッセージを発信するや否や、足先から首までのあらゆる筋肉が「了解! 任せて!」と、瞬時に協力すると軽やかなライズができます。

「瞬時に」ですから、頭と体の連携に一瞬でも時差ができると、歪みが出るので注意しましょう。

 

分りやすい実験として、足だけ使って、その場でライズしてみましょう。体が重く感じられると思います。これが「下から積み上げる作業」で、かつ、「一部の筋肉だけ」に働いてもらったからです。

 

こうした実験をすると「頭からあがる」が理に適っていると納得されることでしょう。

 

 

次回はウィーブ・フロム・PPを解説します。既に使っていて、上手く踊れないと思っている人は、どこで踊りにくくなるか、その箇所を明確にしておいてください。きっと、役立つ情報を提供できると思います。

 

では、次号まで! それまで「頭からあがる」を実践していてください!

 

 

 

【用語の説明】

ホバー(Hover):英語の意味は「空中に漂う、停止する」。

ローテーション(Rotation):回転、あるいは回転すること。ターンと同義。

スウェイ(Sway):足首と膝を使って体が右、あるいは左にしなること。テキストには「右スウェイ、左スウェイ、スウェイなし」の表記がされています。英語の意味は「傾く、揺れる」。

アレクサンダー・テクニーク(Alexander Technique):心身の不必要な自動的な緊張に気づき、それをやめていくことを学習する方法。頭-首-背中の関係に注目することに特徴がある。オーストラリアの舞台俳優、アレクサンダー(1869年 – 1955年)が発見し方法論化したもの。

 

 

 

 

 

もっと詳しく!(Q&A)

(※読者専用フロアでお答えしたことを、もう少し詳しく説明するコーナーです。)

 

質問:
ワルツのPP~スクエアになるとき、どうしても身体が沈んだようになり、ボディが離れてしまいます。トーンを高くしたまま離れないようにするにはどのようにすればいいのか、教えてください。女性(神奈川県 はちこう)

 

回答:
「読者専用フロア」の限られたスペース内で、どうしたら分かり易いかと、女房と頭を悩ましながら作った回答がこれでした(下)。

PPでもスクエアでも女性のいるべき場所は男性の右腕の中です。あなたの左腕が高級クラブのママさん口調で

あ~ら社長さん、もう少しいいじゃありませんか~

と言いながら男性の右腕に、軽いけどしっとりまとわりついている ―― そんな気持ちで左手を使って「そこ」に居続けてください。きっと上手くいきますよ。

 

女性の左腕は、「ツタが巻き付く」感じでもいいです。要は、しっとりまとわりついて、自分自身を男性の右腕の中に納め、男性のボディから来る右腕の動きに反応できるようにすることです。

自分の足の上にいられないと、ボディ・トーンをキープするのは困難になりますから、自分自身の足に立っていられる場所を捜すことを最優先しましょう。

ひとつの方法として、男性の腕に置いた左手(特に拇指側)が、どんな動きをされても、少しのずれも起こさないように気をつけて、全身がそれについて行くように踊ってみましょう。その間、左肘の角度を固めておこうと思わないでください。

 

(ダンスファン2015年12月号。連載11ワルツ5おわり)

 

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